前書き
※こちらは「ラブライブ!サンシャイン!!2期」第1話放送直後くらいに書かれた記事なので、現在の視点では整合性が取れない部分もあるとは思いますが、敢えてこのまま掲載することといたします。
本当であれば「ラブライブ!サンシャイン!!2期」放送終了後に更新を再開する予定でしたが、決して「繋がりが無い」ともいえない2期11話放送直後の今の方が、振り返る価値があるのかもしれない?と思い#11のみこのタイミングで更新することといたします。
2017年 12月20日
こんにちは、或いはこんばんは。
ラブライブ!サンシャイン!!2期の放送がはじまり、すっかり私もそちらにかかりっきりになりがちなのですが。同時並行的にこちらも進めて行こうと思います。
今回は2期において最重要回と見る人も多いであろう「私たちが決めたこと」です。こちらはラブライブ!サンシャイン!!で監督を務めていらっしゃる酒井和男監督が、総合演出をされている回ということで、サンシャインとも関係性の深い回。
実の所考察すべき要素もそれほど多くは無いのですが、このタイミングにぜひ「演出面」も含めて振り返って頂ければと思います♪
参りましょう#11「私たちが決めたこと」です。
■#11あらすじ
季節は高校受験。廃校が阻止された音ノ木坂でも受験が行われ、雪穂と亜里沙も音ノ木坂を受験します。結果は見事合格。二人は来年より音ノ木坂の生徒になることに。合格を姉に報告する亜里沙。「μ'sに入る!」無邪気な亜里沙の希望は、μ'sメンバーが自然と見ないようにしていた「事実」を白日の下にさらすこととなる。「3年生が卒業したらμ'sはどうなるのか」。ラブライブが終わるまでは、結論を先延ばしにするはずの問題。しかし新しく生まれる後輩たちのために、そして自分達のために結論を出す必要がありますが...。
■#11の主要人物
・高坂雪穂、絢瀬亜里沙
お互いの姉が所属するグループ「μ's」。そのあり方を愛し、応援するファンでもある二人。音ノ木坂に入学することとなり、今度は自分達も「スクールアイドル部」の一員となる事が可能となる。その時自分達は「μ's」の一員になれるのか。なるべきなのか。二人の悩みはμ'sが自分達の行く末を決めるための引き金になり、二人もまた自分達の未来を決めなければならなくなる。二人の決めた崇高な願いは、Aqoursにも引き継がれていく。
■受験と卒業
無事継続の決まった音ノ木坂。来年度に向けて新入生を募集し、入学試験も行われたようです。UT-Xを受験するつもりだった雪穂も、元から音ノ木坂への入学を希望していた亜里沙も、音ノ木坂を受験。結果は見事に合格。二人は来年度から「音ノ木坂高校」の1年生になることとなります。
合格に歓喜する亜里沙、どこか淡々とした様子の雪穂。二人のパーソナリティがここにも現れています。雪穂と亜里沙。μ'sメンバーである穂乃果と絵里の妹である二人。そんなμ'sにとって「身内」と呼べる二人が、今回の物語の起点となっていきます。
元生徒会長である姉=絵里を見つけ合格を報告する亜里沙。
「私μ'sだよ!μ'sに入る!!」
亜里沙にとって、合格=μ'sへと加入すること。もはや「姉の高校だから」とかではなく、「μ'sの母校だから」そして「μ'sの一員となる為」に音ノ木坂を受験したと言っても過言ではない亜里沙。そんな亜里沙の言葉にどこか困惑する様子の絵里。そんな二人を見つめ「一つの疑問」へとたどり着く雪穂。
自宅に戻り、姉へとその疑問をぶつける雪穂。
「μ'sって3年生が卒業したらどうするの?」
雪穂の質問は、秋口からメンバー全員が感じながらも、敢えて直視を避けてきた問題でした。しかし、「μ'sへの加入を夢見る下級生」がいる以上、それは本人たちだけの問題ではなくなります。「μ'sをどうするのか」。穂乃果たちは、その結論を求められることになるのです。
■μ'sに対する視線
3年生が卒業したらどうするのか。メンバー間では「ラブライブが終了するまでは封印」とされていた話題。それは大会に集中するためでもありましたが、同時にそれぞれの考えが違い過ぎたからでもありました。
アイドルファンであるにこにとって、アイドルは「卒業を積み重ねても新メンバーが加入し、その歴史を紡いでいくもの」という認識。故に「μ'sは解散しない」という考え方。これは現代のアイドル感的にはいたって「普通」の考え方ですね。
メンバーの卒業・引退と同時に「解散」するのが当たり前だった以前のアイドルと違って、メンバーを入れ替えながら継続していくのが現在のスタンダード。しかし、その考え方に疑問を呈すのは、同じアイドルファンの花陽。
「本当にそれでいいのかな?」
彼女の中に結論があるわけではない。けれども、にこのようには割り切れない。アイドルファンであるという視点を除けば、「μ's」によって「自らの人生」を切り開き、救われた花陽にとってその存在は「アイドル」という枠組み「のみ」で語れる存在ではない。
そしてそれは他のメンバーにとっても同じ。とても「大切」な存在としての「μ's」。だからこそ、その「結末」に関しても、「全員の納得のいく」ものを、全員で決めていく必要があるはずです。
意見を求められる絵里。彼女の答えは「それは私達が決めるものではない」というもの。「卒業していく私達ではなく、残されたメンバーが決めるもの」だから「穂乃果たちに決めてほしい」。
絵里の判断に従うにこと希。穂乃果たちは、6人で「μ'sの今後」に関して、決める必要性が出てきてしまいました。
■憧れ
答えに迷いながらの家路。自宅に着くとそこには亜里沙が。μ'sへの憧れを全くもって隠さない亜里沙。それと同時に「μ'sが続き」「自分がμ'sに加入すること」にもなんの疑いも抱いていません。
「穂乃果さん、ちょっと見てもらって良いですか?」そう言って彼女が見せたのは、「μ'sミュージックスタート!」の掛け声。
μ'sメンバーにとっては、とても大切にしている掛け声。穂乃果の中で燻る「何か」がチクチクと痛むもの。それは亜里沙に全くの邪気が無いから、より強調される痛みでもあります。
そんな姉の様子を気遣って、亜里沙を制する雪穂。姉がちょっと暢気な分、妹である雪穂はどこか大人びていて、こんな時にも繊細な配慮が出来る子です。
繊細な分、μ'sメンバーである姉の「複雑な心境」をも、感覚的に理解している雪穂。「μ's」は姉たちの大切なもの。そして自分達にとっても「大切な存在」。だとすれば、ファンである自分達は、μ'sの「何を尊重すべき」なのか。雪穂は亜里沙に問いかけます。「亜里沙はさ、μ'sのどこが好き?」
二人にとっても大切な結論が、この回では導き出されることになるのです。
二人がこの日決めた「大切な結論」は、μ'sの「結論」にも少なからず影響を与えることになります。
■雪穂と亜里沙の答え
メンバー間で会話しながらも最適解を見出せないμ's。そんなメンバーを尻目に、雪穂と亜里沙は自分達なりの「答え」を見出します。
二人が決めた結論。それは自分達は「μ'sには加入しない」というものでした。
「自分の好きなμ's」。その姿を思い浮かべた時、その中には「自分」はいませんでした。
「憧れる」ことと「同化」することは別。「応援する」対象として自分達にとって大切な存在であるμ's。それ故にその中に「自分が入る」という画を、二人は描くことが出来ませんでした。
雪穂と亜里沙がたどり着いた結論。それは「私達は私達にしか出来ないはハラショーなアイドル」を目指すこと。「μ'sへの憧れ」を胸に残したまま、μ'sとは違う、「自分達にしか出来ないアイドル」を目指す。
Aqoursも同じ悩みにぶち当たりながら、その迷いを振り払うまでに12話を要しましたが、この二人はその解答にほぼ一日でたどり着きました。
とはいえ、それはμ'sが「自分達にとってとても身近な存在だから」にほかありません。常に見守り、常に応援してきた。だからこそ、彼女達が大切にしている存在としての「μ'sの価値」もより理解している。それゆえの理解の速さなのだと、私は考えています。
二人が導き出した「解答」。これが穂乃果にも一つの「ヒント」を与えることになります。
■遊びに行こう!
亜里沙と雪穂の言葉をヒントに、1・2年生だけで「μ'sのこれから」に関する考えをまとめた穂乃果たち。
結論を告げるのか...と思いきや、3年生を強引に連れ出し、遊びに行くことになります。
どこで何をするのかはノープラン。それぞれの出した案もバラバラ。
だったら「全部に行けばいい!」。
オール・オア・ナッシングな穂乃果の案で、メンバー案の全てを「叶える」一日が始まります。
なんてことないただメンバーみんなで「遊ぶだけ」の一日。
目標も、目的も無い「ただの一日」。
とはいえ、「ラブライブ!」優勝を目指し、日々練習に明け暮れるだけでなく、同時並行的に生徒会活動などをこなす彼女達にとっては、得難い「一日」でもあります。
今の視点でみれば、なんてことない「一日」も、後から振り返れば二度とない「大切な一日」に変わる。
だからこそ、その二度とない「大切な一日」を、この瞬間に刻み付ける。
2期全体で描かれてきたそんなテーマが、ある種象徴的に描かれることになるこのシーン。ここからもこの#11が2期全体のテーマを集約すべく作劇されていること。
そしてそれだけ「大事な回」であることが伝わってくるように思えます。
■海
一通り「遊び終えた」一行。
最後に穂乃果の行きたい場所へ。そこは「誰もいない海」。
あてどもなく電車に飛び乗るメンバー。たどり着いたのは、冬の、誰もいない海。
度々指摘される通り、本来は「東側」にあるこの国府津の海岸。だとすれば、ここは「日が昇る」方角であり、「日が沈む」方角ではありません。
けれどもμ'sは海に沈む太陽を見る。つまり「ありえない景色」を見ていることになります。
「9人しかいない海に行きたい」。そう願った穂乃果の思いはここに結実して「しまっている」。即ち彼女達は一種の「異世界」へと入り込んでしまっているわけです。
そんな「異世界」で下す彼女達の「結論」。その「結論」が「歴史」の中に刻まれて「いない」のは、彼女達が「異世界」において下した「結論」だからにほかありません。
即ち完全に「μ'sだけ」の「閉じた世界」で「結論が示されようとしている」ということが、なんとなく暗喩されている、というように感じられるのです。
穂乃果たちが決めたこと。それは「大会が終わったらμ'sはおしまいにする」ということ。
彼女達が決めたのは「今」を「永遠に刻み付ける」こと。
本来ならば「μ's」の名前を引き継いで、新メンバーを募集して、穂乃果たちが最上級生となって新たな「μ's」を作っていけば良い。
けれども、それは出来ない。「μ's」はこの「9人」でなければいけない。
誰よりもスクールアイドルを愛するが故に、最後までその結論に納得がいかないにこ。そんなにこを制するのは、真姫。
「にこちゃんのいない、μ'sはいやなの!私がいやなの」
もはや「個人的な感情」に着地していくしかない慟哭。
ことほどさように、彼女達の結論には決して「理屈」があるわけではありません。
だからこそ、彼女達の出した結論を我々が「正しい」か「間違っている」かを結論付けることもできません。
「普通のアイドル」ならばあり得ない「結論」でも、彼女達は「選びうる」。それは彼女達が「スクールアイドル」だからにほかありません。
徹頭徹尾「スクールアイドル」であろうとするμ's。彼女たちの目線の先に「プロ」としての視野はやはりない。だからこそ、μ'sは「スクールアイドル」における「神話」を築き上げることができたのだと、今振り返ると理解できる気もしてきます。
■μ's
μ'sとは、メンバーそれぞれにとっての、ごく個人的な「救い」として機能したグループでした。
μ'sの物語には、メンバーそれぞれの「個人的」な物語が深く関与しているように、やはりそこに「他人」が入る余地はない。
それぞれが、それぞれの「輝く方法」を見出すための「場所」として機能したのがμ's。
だからこそ、彼女達の物語は彼女達だけにしか「紡げない物語」である。
それをμ's自身はこの時強く「実感」したのではないでしょうか。
けれども、「μ'sに憧れる人々」は、彼女達の道程そのものを追いかけてしまう。それは何故かといえば、やはりこの結論が示された場所が「閉じられた異世界だったから」と言えるのかもしれません。
だとすれば、それを「公に示す」必要もある。そんな「物語」は劇場版へと繋がっていくのですが、それはまた別のお話でしょうか。
■「瞬間」を刻み付けるモチーフ
「泣きそうだった」からと慌てて駅に駆け戻る穂乃果。それに続いて走り出すメンバー。辿り着く駅は根府川ですが、国府津の海岸からは10Km以上かかる場所。
ここにも異世界が発生していますね。
記念に写真を撮ろうと話すメンバー。携帯を出そうとする花陽を制す穂乃果。彼女が示すのは、駅の横にある「証明写真機」。
本来一人で撮影するために使う証明写真機に、ギュウギュウに押し込まれる9人。
どことなくユニークな絵面に、先ほどまでしんみりしていたメンバーも思わず笑い出してしまいます。
携帯電話、ではなくこの証明写真機を使ったのは、この証明写真機が「ここにしかないもの」だから。
どこでも、いつでも撮れる携帯電話の写メではなく、この場所でしか撮れないもので写真を撮る。これもまた「今」を強烈に刻み付けるための行為なのだと思えます。
■「終わり」のモチーフ
笑い声が響く駅。ここにもどうやら9人しかいないようです。
楽しげに証明写真を見せ合うメンバー。その陰で映し出されるのは「終わりのモチーフ」たちです。
例えばそれは、駅の横にある「誰かのお墓」。
例えばそれは、既に終わっている「受験」のポスター。
「役割」を終え、ただそこに「佇むだけ」の存在たち。それらのモチーフは、やがては「終わっていく」すべての「物事」に対するメタファー表現として使用されているように思えます。
楽しく笑いながらも、涙がこみ上げてくる花陽。
「楽しい」から。「今」が「楽しくて楽しくて仕方がない」から。
だからこそ、そんな「今」が「終わっていく」ことを強烈に実感する。
「今」が「楽しい」からこそ、それが終わってしまうことが「悲しくて」仕方なくなる。
「終わりのモチーフ」たちがかき乱すμ'sの心。いつの間にやら証明写真もまた、「終わりのモチーフ」として機能し、彼女達の心をかき乱していくのです。
自然とこぼれ出す涙と、それを抑えきれないメンバー。
そんな中でも一人決して泣かないのは、にこ。
これまでどれだけ辛くても、苦しくても、決して弱音を吐かずに、一人「運命」と戦い続けてきたにこ。
彼女のそんな屈強なパーソナリティを支えるのは、決して「アイドル好き」だからというだけではありません。
家庭では、不在がちな母親に代って3人の姉妹の面倒を見て、バイトをしながら家計をも支えるにこ。夢見がちなμ'sメンバーの中では、極めて「現実」の「酸いも甘い」も知っているのが矢澤にこという存在です。
だからこそ、こんな時でも「泣けない」。
屈強すぎる彼女のメンタリティが、この場所では逆に彼女を「泣かせない」要素として機能してしまうのです。
そんなにこの心を優しく受け止めるのは、希。
これまでも、にこをそっと見守り、彼女の最大の理解者であり続けた希が、「語ることなく」差し伸べる手。
そこに包まれた時初めてにこは「号泣」する。
それはたった一人、味方のいない世界で、ただ一人「アイドル」を夢見、その世界にだけ救いを求めて生きて来ざるを得なかった少女と、
そんな少女の「孤独な魂」を、「μ's」というグループを「生み出す」ことで救った「女神」との関係性が、メタ的に表現されているシーンなのだと感じました。
それまで一度も、誰にも見せたことのないくらい、子供のように泣きじゃくる姿は、彼女の「孤独な魂」が「μ's=女神」との出会いによって、ようやく「救われた」ことの証でもあるように思えるのです。
最後まで「μ's継続」に拘り続けたにこ。
そんなにこにとっても「μ's」とは、極めて個人的な「存在」であることが、ここでは極めて明確に伝わるシーンとなっているように思えます。
かけがえのない「一日」と、その経験をもとに、更に強くなったμ's。
彼女達はただひたすらに「有終の美」、すなわち「ラブライブ優勝」へと駆け上がっていくことになります。
というわけで、2期というだけでなく、「ラブライブ!」という作品内でも重要な回「私たちが決めたこと」でした。
徳井青空嬢の名演技はもちろん、酒井和男氏の繊細な演出が光った素晴らしい回だけに、「サンシャイン!!」を追いかける際には、是非再試聴していただきたい回でもありますので、もしお時間があれば、2期11話だけでも見てみてはいかがでしょうか??
物語はいよいよ佳境!
ラストスパートに向かう12話・13話は、恐らく「サンシャイン!!」2期放送終了後に更新することとなると思います。。今しばらくお待ちくださいませ。
それでは、今回もお付き合い頂きありがとうございました!
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