皆様こんにちは&こんばんは。
今回は15話「雨の音」のハイライトをお届けしようと思います。
今回ちょいと時間がかかったのは、物語を表面的にとらえると非常に簡易な内容になってしまいそうで。とはいえ、お話自体には、もっと「深い」何かがありそうな、掘り甲斐がありそうだなぁと感じ、掘り続けてしまったせいです(笑)。
結果、内容に煩悶し、自問自答する...という今回のお話そのものの状態になってしまいました。
結果、得たインプレッションで説明しづらい要素のものに関しては、更なる深堀りカテゴリー「Dig」を用意し、そちらにて披露させて頂こうという結論に至りました。
ですので、こちらの「ハイライト」に関しては、通常通りのテンションで行きたいと思います。
お待たせした割には平易な内容で恐縮ですが、もっとややこしいものは、そちらの「深掘り=Dig」カテゴリーをお楽しみくださいませ。
それでは参りましょう。15話(2話)「雨の音」です。
■条件
0に戻ったとしても。続ける意味すら無いとしても。
それでも進むと決めた千歌。そしてAqoursのメンバー。
鞠莉はもう一度父親に掛け合うことに。
食い下がった結果出された条件は、「100人の入学希望者を集める」こと。10人集めるのにも四苦八苦したにも関わらず、その10倍を集めるというのはとんでもない条件。
鞠莉の父も、鞠莉に根負けし、「話を終わらせるため」に出した条件のようにも映りますが...。
とはいえ、本当は「終わっていたはずのもの」を蘇らせたAqours。
そしてその成果はメンバーによる「粘り」が生んだもの。このように「運命」を「自らの手」で「力づく」で切り開いていくのが、Aqoursの物語。
確かな目標の一つである「入学希望者」という数字を取り戻し、Aqoursは再び走り始めます。
■曲作り
とはいえ、学校説明会もラブライブ地区予選もすぐに始まってしまいます。
ラブライブ予選では「新曲」こそが参加の条件。
また入学説明会参加者に「インパクトを与える」ためにも、新曲が必須と言う状況。
現状楽曲および衣装を担当しているのは、2年生の3人。
故に短期間での楽曲作りは、明確に彼女達のウェイトとなるものです。
この問題を「Aqours」全体で解消する必要が出てきました。
■2年生以外
過去に、「Aqours」と名乗りスクールアイドル活動をしていた3年生3人(以後旧Aqours)。
以前には3人がそれぞれ役割分担し、楽曲製作も担っていました。
その中で産まれた楽曲「未熟DREAMER」は、1期のハイライトとなる第9話で登場し、物語上でも非常に重要な役割を果たしました。
また、この楽曲の完成度を以てすれば、Aqours内の「第2の製作部隊」として、しっかりとした仕事がこなせそうな気もします。
そんな中明かされるのは、ルビィが旧Aqoursにおいても、衣装担当補助として活動していたという事実。
その事実が閃きを与えたのか、鞠莉の発案によりAqoursは「2年生チーム」と「3年生+1年生チーム」の分業体制で、今回の楽曲作りを行うこととなります。
このシナリオ構成の狙いとは、明確に「1期で描き損ねた要素の補てん」ならびに、「Aqoursがチームとして連携していく必然性の補てん」という2点の「補てん」にあるのでしょう。
1期では新Aqoursを担う2年生3人と、旧Aqoursの中心であった3年生3人の物語を同時並行的に描きつつ、両者が「交わる」ことを物語のハイライトとして設定しました。
その物語はとても魅力的で、感動的でもあったのですが、反面各キャラクターそれぞれの内面や個性を描く時間が足らない!という現象が起きてしまいました。
特にその影響をうけてしまったのは「1年生3人」で、序盤に主役回があったものの、後半では「賑やかし役」に徹している感は否めないものがありました。
また、1年生と3年生の絡みもほぼ皆無。
ラブライブ!は「チームもの」である以上、メンバーそれぞれの結びつきと信頼関係の成熟を描くことが大切になっていきます。
※1期10話は合宿回ではありましたが、物語の焦点はどちらかといえば、チームの連帯というよりも、2年生3人の物語のフックとして利用された感があります。
そう考えれば今回の物語は、本家「ラブライブ!」における「1期10話」や、「2期2話」のような「チームとしての成熟」についての物語が描かれる回となったのかもしれません。
とはいえ、その視点はあくまでも「サンシャイン」独自のもの。本家とは少し「異なるもの」になりました。
どこがどう「異なる」のか、というのは後述するようにいたします。
■鞠莉宅にて
鞠莉宅でのあれこれは、合宿回故のサービスシーンでしょうか。
とはいえ、自由奔放な果南や、知られざる鞠莉邸の実態など、これまで描かれなかったキャラクターの側面やバックボーンが描かれたのはとても興味深い部分でした。
この像は、親バカ故なのでしょうか。
それとも鞠莉そっくりなだけで、実は鞠莉の母君がモデルだったりするのでしょうか。
■ぶつかり合う個性
楽しく豊かな鞠莉宅での時間。
反面、全く作業が進まなくなり、「中間」をとって以後黒澤家で作業継続することとなった6人。曲のアイデアを出しあうことに。
花丸が提示したのは「無」。
「無とはすなわち無にあらず。何故なら無という言葉がある時点で無という意味が”存在”してしまっている。」
この極めて「哲学的」なテーマに賛同を示すのは善子。
厨二病と哲学の相性は抜群なのです。
※ラブライブと哲学を巡る冒険に関しては「Dig」にて書かせていただきます。
反面意味をさっぱり呑み込めない鞠莉と果南。
「もっと分かりやすいもの」ということで、鞠莉は書き溜めていた楽曲を披露することに。
「披露するのは、ニネンブゥリデスネー」オゥオゥオゥオゥオゥオーオゥ
ということで、披露される鞠莉作曲の楽曲。
その曲調はなんとハードロック。そしてヘビメタ。
そういえばロック好きという設定ありましたよね。ということで、忘れていた設定がここでしっかりと発掘されました。
ノリノリの鞠莉と、理解を示す3年生二人。
反面拒絶反応を示す1年生3人。
特に花丸が「雑音」とまで呼んで忌み嫌うのは、ちょっと意外でした。
(この辺の元ネタなんとなく想像が付いているので、どこかで披露したいところ)
■本家への「オマージュ」とその「目線」
どうにもすれ違ってしまう花丸&善子と果南&鞠莉。とはいえ作曲は共同作業。仲良くなるきっかけが欲しいのですが。
そんな中、仲良くなる為には「遊んで」仲良くなる!脳筋的な発想の果南が選んだのはドッチボール。
これには鞠莉もノリノリです。
ここでドッヂボールという「ボールをぶつけ合うだけ」の競技が選ばれたのは、本家「ラブライブ!」の1期10話「先輩禁止!」におけるまくら投げへのオマージュにも思えます。
μ'sは「まくら投げ」という理屈の無い遊びに、「理屈」に拘って壁を越えられないでいた真姫を巻き込むことで、チームへの同化を促しました。
しかし、Aqoursの場合には、そう単純には済みません。
元々インドアで運動が苦手な1年生チーム。
ゲームが成立する前に、あっさり「負けて」しまいます。
ドッヂボールでは「同化」することが出来なかったAqours。
今度は1年生チームのホームへ。
場所は図書館。
花丸とルビィの最初の出会いが図書室であったように、インドア派の1年生にとって、図書館は憩いの場所です。
しかし、ここでは生来のアウトドア派である果南と鞠莉が馴染めない...。
両者の本質の違いを読み取ったダイヤが提案したのは、「裸の付き合い」。
これまたμ'sの合宿回ではなじみ深い場所ですね。
μ'sは裸になって本音を語り合うことで相互理解を深めましたが、Aqoursはここでも理解しあえません。
すぐに風呂から出たがる果南と鞠莉。温泉を楽しむ花丸とルビィ。
両者は理解しあう様子すらみせないのです。
ここから考えられるのは、これらのシーンが徹底して、μ'sが用いた「相互理解」のモチーフを否定しているということ。
とはいえ別にμ'sを否定しているわけではありません。
あくまでも「Aqours」というチームが「μ's」というチームとは「別」の存在であること。それ故に相互理解の方法も異なることを明文化する為の演出という気がします。
そしてそれは次のシーンでも継続されます。
■雨の中進む物語
突如降り始める雨。
これまでのラブライブ!の文脈でいえば「良くないこと」や「物語が停滞する」ことを象徴する「雨」。
ルビィもそんな雰囲気に当てられてか「なんにも進んでないのかも」と弱音を吐きます。
しかし、今回はこの「雨」の中で、停滞していた物語が「動き出す」のです。
雨宿りの場所として選ばれた花丸の知り合いの「お寺」。
そこで6人は、チームとしての「連帯」を手に入れることになるのですから。
こういった描写からも、これまでの「ラブライブ!」の物語を逆説的に捉える視線というものを感じますね。
■相互不理解
何もいないお堂の中。
特にすることもないので、作曲作業を継続しようとするメンバー。
善子の作詞ノートを見つけた花丸たちはその内容を読みますが、あまりにも独特な内容でやはりだれも理解が出来ません。
「決定的に理解しあえない自分達」
お互いのことを知れば、仲良くなれる。そうすれば自ずとチームとしての連帯が生まれ、作曲もできるはず。
そう信じていたにも関わらず、お互いを知れば知るほど、その「溝」が大きくなって行くように感じてしまいます。
「ルビィたち、そんなに違うのかな」
そんな弱気な言葉に、正しく水が刺されます。
■雨音
黒澤姉妹に浴びせられる「冷や水」。
その正体は古いお堂の「雨漏り」でした。
雨漏りを防ぐため、お寺のあちこちからお皿やお椀、お盆など「雨を受け止める容器」を持ち寄るメンバー。
そこで思いもよらぬ出来事が。
雨を受け止める様々な形の容器が、様々な音色を紡ぎだし、それが不思議なアンサンブルとなって「音楽」を紡ぎ出したのです。
それはAqoursに天啓を与えました。
同じ雨でも、雨漏りの穴の大きさや、受け止める容器によって、別々の音を出す。
それは自分達も同じ。
同じ人間でも、育った環境や、性格によって、様々な個性を持つ。
決して「均等」ではない「個性」を持った自分達。
しかし、それらが重なったとしても、決して「不快な音」にはならない。
かえって、別々のリズムや音色が重なった方が、味わい深い「音楽」を生み出す。
雨音から「楽曲」のインスピレーションを受けただけでなく、「自分の在り方」そして「自分達の在り方」に関しての気付きを得た6人。ようやく、今回の物語の「答え」を得るに至ったのです。
■装置としての仏像と「半眼」
今回重要なシーンで意味ありげに登場した「お寺」と「仏像」というモチーフ。
これらが存在する場所で、6人がある種の閃きを手にする...というストーリーは「神」を否定する「ラブライブ!サンシャイン!!」という作品には似つかわしくないなぁ...と、個人的に少し混乱しました。
しかし、これらの存在、特に「仏像」を「神」のメタファーではなく、「仏像そのもの」として認識すれば、これ自体が今回の物語を現す上での「舞台装置」として用意されていたのだ...となんとなく腑に落ちました。
やたら「顔」をアップされることが多かった仏像。
仏像にも様々な特徴があるのですが、今回において特徴的に使用されたのは「半眼」という要素でしょうか。
仏像における「半眼」の意味は下記のように説明されています。
お釈迦さまの目は、半眼であったと言われております。
目を半分くらい閉じておられたということは、自分の心を、内面を常に見つめておられたということです。
人の心の中にあることは、自分の心にもあるのだ、と内省されていたのであります。
この内省を欠いてしまうと、私たちの目は外の物事に向いてしまって、外が悪い、他が悪い、あいつが悪い、という方向に行きがちです。
ですが、そうではなくて、自分を見つめていく。
それが人と仲良くしていく一番大事な点です。
これはもう、夫婦とか親子とか、あらゆる関係の中にあてはまることなのです。
他者の振る舞いを見て、その「良くないところ」にだけ目を付けるのではなく、
その「在り方」を通して、改めて客観的に「自分の内面」を見つめ直す。
そうすることで改めて「他者の在り方」とその「価値観」を「理解する」ことが出来る。
「他者を知る事」とは「自分を知る事」であり、「自分を知る事」もまた「他者を知る事」に繋がる。
そんな今回の物語のテーマに対する「モチーフ」として、仏像も用意されたのかもしれない。
そう思えるのです。
■私の中の私
朝。
屋根に上がって朝日を見つめる千歌。
どうやら千歌も作詞が完了したようです。
「輝き」とはなにか。
その答えを「私の中の私が教えてくれた」。
これもまた前述したような「自分を見つめる」すなわち「自問自答」に通ずる意味合いの言葉です。
今回の物語をマクロ的に読み解いてみると、Aqoursという「一つの人格」内で行われた「自問自答」をメタ的に描いた物語なのかな?と思えます。
「遊び」や「体を動かす」という「アクティブな衝動」に駆られる果南と鞠莉は人格内での「煩悩」を示すもの。
逆に「「知的欲求」を高め「精神的に満たされたい」と考える花丸と善子は「悟り」を示すもの。
ダイヤとルビィはその両者に理解を示しながら揺れ動く「理性」。
それぞれがぶつかり、煩悶する中で「Aqoursとは何なのか」という答えを追い求め、その答えを得る。
そうすることで、ようやく「Aqours」という「チーム」の一つの「人格」が生まれていく。
「チームとしての結託」と「個性の獲得」を、「μ'sとは違う」「Aqoursならではの視点」で描いた物語という意味で、今回もまた「ラブライブ!サンシャイン!!」らしい意欲的な回だったな!と思う次第であります。
ということで、15話のハイライトでした。ホントはもう少し深い視点での見方があるのですが、そこをこのハイライトに加えるとグチャグチャになるので避けた次第です。そちらはただでさえ一般受けしない当Blogで、より一般受けを避けたような内容になると思います。ホントに興味のある方だけお読み頂ければと思います(笑)。
あぁ、大変だった。
ということで、今回もお付き合いいただき、ありがとうございました!
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