Love Live!Aftertalk!

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ラブライブ!ハイライト 第7話「エリーチカ」&第8話「やりたいことは」

こんにちは。

今回は久々に2話セットで考察していこうと思います。第7話および第8話は「μ'sが9人になる」記念すべき回でもありますが、それと同時に「エリチ回」としての側面が強い回でもあります。絵里を頑なにさせる理由、彼女を縛り付ける「カセ」、そして「救い」。この一連の物語は続けて考察した方が良い内容だと思います。とはいえ今回も物語自体はシンプル。考察もシンプルになるとは思いますので、どうぞ気楽にお付き合い頂ければ幸いです。

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■第7話&第8話STORY

 慌てた様子で部室に駆け込む花陽。彼女が発表した「大変なこと」とは、「スクールアイドルの祭典=ラブライブ!」開催の報せ。全国からランキング上位のスクールアイドルが選出され、トーナメント方式で「スクールアイドルの頂点」を目指す。「スクールアイドルファン」である花陽にとっては見逃せない大会。「チケット入手」の算段を始める花陽に対して「出場しないの?」と問いかける穂乃果。花陽にとっては思いがけない問いかけ。とはいえ「折角スクールアイドルをやっているのなら、出場を目指さなければ!」とメンバー一同盛り上る。μ'sにとって「ラブライブ出場」は目に見える目標へ。絵里を通せば拒否される可能性もあるこの目標。ならばと理事長への直談判を試みる。しかし思惑とは裏腹に理事長室前にて生徒会コンビと鉢合わせしてしまう。なし崩し的に絵里の手前で「ラブライブ出場」を直訴することになる穂乃果。しかし理事長の反応は思いのほか良好。「エントリーするだけなら」と許可を得る。理事長がμ'sを後押しする姿勢に納得のいかない絵里は「生徒会は別の方法で廃校を阻止する」と理事長室を出ていく。「エントリー」を許可した理事長。代わりに「学校の成績が疎かにならない」よう、テストでメンバーが一つでも「赤点」を取ったら「エントリー辞退」をする...という条件を突きつける。勉強が苦手な穂乃果、凛、にこをフォローするため、放課後勉強会が実施されることに。

場面は変わって放課後の校門前。下校しようとした海未の耳に聞こえてきたのはμ'sの楽曲。それを口ずさんでいたのは金髪碧眼の少女。彼女は絵里の妹、亜里沙。どこからかμ'sのライブ映像の別カットバージョンを手に入れ、常に聞いていると言う彼女。自分自身をμ'sのファンと自称する。絵里を迎えにきた亜里沙。海未はなし崩し的に絵里と雑談をすることに。絵里がなぜμ'sを認めないのか。その理由を聞きだしたい海未。しかし絵里は具体的な理由を明言しない。「μ'sだけでなくスクールアイドルすべてがお遊びに見える」と告げる絵里。彼女がここまでスクールアイドルを嫌う理由は不明のまま。

テストが近づき勉強を続けるメンバー。3年生のにこの勉強を見る希のもとに、絵里の事情を聴きに行く海未。そこで明かされたのは「絵里の過去」。本格的にバレエを学び、バレリーナを目指していた絵里。そんな彼女の「過去のダンス映像」を見た海未はそのクオリティに衝撃を受ける。絵里が「アイドル」を「お遊び」扱いする理由は、自身の「ダンスレベル」がそれらを軽く凌駕しているからなのだと知る。絵里の事情を知ったことで、海未の中に絵里に対する理解が生まれる。それと同時にμ'sの一員としての煩悶も抱えることになるのだが。

テスト本番。一番心配された穂乃果もギリギリ赤点をクリア。「ラブライブ出場」への障害が回避されたことでいよいよ本格的に練習に挑もうとするμ's。しかしそんな彼女達の耳に「学校の廃校が決定した」という情報が飛び込む。思わず理事長室に駆け込む穂乃果たち。理事長曰く「すぐに廃校が決定」というわけでなく、「オープンキャンパスの結果」如何で来年の生徒募集を取りやめるという状況であることが明らかになる。

一時の安心を得るも、いよいよ「廃校」が現実味を帯びてくる中で、穂乃果と絵里、それぞれがそれぞれの方法で廃校阻止を試みることに。「オープンキャンパス」での「ライブ開催」を目標とし、そこで自分たちの活動の成果をアピールすることをもくろむμ's。反面絵里は「学校」のことをキチンと説明する事で、周囲の理解を得ようとする。

「ライブ」に向けて準備を進めるμ's。メンバーは手応えを得るも、海未はパフォーマンスに納得がいかない様子。今のままでは「これ以上のクオリティ」を望めない。それを悟った海未は絵里の過去をメンバーにも明かし、彼女に教えを請うことを提案する。とはいえ、絵里とは常にぶつかり続けてきたメンバーはその提案に素直にうなずけない。しかし唯一穂乃果はその考えに賛同を示す。身の回りにダンスが得意な人がいるのであれば、教えを請えばよい。その穂乃果らしいシンプルで真っ直ぐな考え方はメンバーの頑なな姿勢も崩す。

μ'sとは別に説明会の準備を進める絵里。「学校の説明資料」を亜里沙たちに聞いてもらうものの反応は芳しくない。「お姉ちゃんは本当にこれをやりたいの?」「お姉ちゃんがホントにやりたいことは何?」亜里沙のシンプルな問いかけに応えられない絵里。

翌日、μ'sからダンスレッスンの依頼を受ける絵里。意外な申し出に戸惑うものの、しぶしぶその申し出を受けることに。絵里のレッスンはさすがの厳しさ。ダンスの基本を理解していないμ'sに厳しい叱責が飛ぶ。トレーニングの厳しさに離脱するメンバーが続出。絵里はこんなものかと引き上げようとするが、穂乃果とメンバーからはレッスンに関する「感謝」の言葉が飛び出す。意外な反応に驚きながらも、その真摯な態度に心を揺さぶられる絵里。μ'sのことを気にし始めた絵里に、亜里沙はその魅力を語る。「彼女達を見てると元気をもらえる」のだと。

翌日も厳しいトレーニングに付いてくるμ's。「努力がすぐに成果に繋がらない事」に対して「辛くないのか?」と思わず問いかける絵里。その問いかけに対する穂乃果のまっすぐな回答を真正面から受け止めきれない絵里は思わず屋上から逃げ出してしまう。絵里を待ち伏せていた希。絵里にμ's加入を勧める。絵里の近くにいて、それでも分からなかった「絵里がやりたいこと」。その回答が「μ'sにある」ことを希は信じている。希の指摘は絵里にも刺さる。「踊る」ことに人一倍こだわってきたからこそ、挫折を受け入れられなかった絵里は、いつしか「一番好き」なことを封印した。それ故に「自分が本当はやりたいこと」に真っ直ぐ向かっていくμ'sを敵対視せざるを得なかった。「今更私がアイドルやりたいなんて言えると思う?」意地から頑なになった絵里の心。それを溶かすのは、やはりμ'sの「受け入れる」姿勢。「自分から入りたい」と言えない人に手を差し伸べる。それはにこや真姫の時にもしてきたこと。「アイドル」をすることが「自分にとっての正解」なのか、未だに疑問が拭えない絵里はその申し出にも素直にうなずけない。そんな絵里に希がかけた言葉は「やってみればいいやん」というシンプルなもの。「特に理由なんか必要ない。やりたいからやってみる。本当にやりたいことって、そんな感じで始まるんやない?」希の「スクールアイドル」の世界観を一言で説明した言葉に、絵里の頑なな心も融解。穂乃果の手を取り、絵里はμ'sの8人目のメンバーとなる。それと同時にμ's加入を宣言する希。「9人になった時に未来が開ける」「だからμ'sという名前にした」。「9人の芸術の女神=ミューズ」から発想を以てつけた名前。その名付け親は希だった。かくして9人となったμ's。いよいよ全メンバーが揃ったことに。

オープンキャンパスでのライブに向けて練習を積むメンバー。絵里の指導もあって能力を最大限まで引き出されたメンバーは「目に見えない限界」を突破していく。オープンキャンパス当日に披露された曲は「9人の始まりの曲」。タイトルは「僕らのLIVE 君とのLIFE」。「ラブライブプロジェクト」の始まりを記念する楽曲は、観衆にも大好評。見事なパフォーマンスを披露した穂乃果と絵里は思わず笑顔で顔を見合わせる。空に輝く太陽。それを見つめる絵里の表情はどこか晴れやかだった。

■第7話&第8話での登場人物プロフィール

高坂穂乃果

7話では「バカーズ」の一員としてコミカルな表情を見せるものの、やはり締めるところは締める。頑なな絵里にも真摯に向き合い、彼女の頑なな心を溶かすことに成功する。彼女の真っ直ぐな心がなければ、μ'sはこの「9人」にはならなかったことだろう。

南ことり

目立つ活躍は無いものの、「絵里にダンスの指導を受けるべきか否か」の判断においては穂乃果の考えを支持。また穂乃果の教育係を買って出るなど、「ほのキチ」としての役割をきっちりと果たした。と言う冗談は置いておいて、内部の調整役として、今回もしっかり機能していた印象。

園田海未

「アスリート」としてμ'sの指導を買って出るも、「ダンス」の専門家では無い故の壁に自ら気付く。「見る人を魅了するパフォーマンス」を作るための指導者として、絵里の必要性を真っ先に提案した海未。絵里とは反目するものの、彼女の能力をμ's内では誰よりも先に評価していた人物でもあった。

小泉花陽

7話冒頭では「ラブライブ」の説明係。8話では若干影は薄かったが、絵里の熱血指導に潰れかけるも、決して弱音を吐かない芯の強さを見せた。

星空凛

7話では「バカーズ」の一員として、8話では運動神経抜群の割に「体が硬いこと」や「バランス感が悪い」ことを露呈するなど、この2話でも「狂言回し」としての役割を十分にこなした。絵里の指導を受けたことで、上記2点は見事に克服。成績は特別良くなってないみたいだが。

西木野真姫

絵里をどこか嫌っている印象のある真姫。頑なに「一匹狼」を貫こうとしている彼女の姿に、自分を重ねているのかもしれない。「楽しくやる」ことに重点を置く真姫は絵里の指導が「μ'sにとって足枷になる」懸念を感じていた。真姫もまた頑なさを捨てきれない人物。そんな彼女の「現状」を看破した希がアドバイスを送るのは、もうちょっと先の話。

東條希

7話・8話ともに絵里の理解者でありながら、彼女に「方向転換」を迫るキーマンとして活躍した。μ'sの9人目のメンバーとなるだけでなく、その名付け親であったことも明かされる。

矢澤にこ

真姫と同じく、絵里がμ'sの活動に関わることには懐疑的。とはいえ、その理由は真姫とは別の模様。要するに最上級生としての威厳を示せなくなることに不満を感じているようにも見える。それとは別に不信感を抱く理由もありそうだが。

絢瀬絵里

今回の主役。彼女の隠された過去が明かされると同時に、これまでなぜ「頑な」にμ'sの活動を規制しようとしてきたのかも分かることに。彼女に関しては本文で触れることにしよう。

 ■第7話・第8話を読み解くポイント

☆その1 「ラブライブ」とはなんぞや?

遂に登場した「ラブライブ」という単語。しかしその意味はメンバーにも浸透はしていません。

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これまでタイトルでありながら、一度も登場しなかったラブライブ」という単語。今回ようやくその単語の意味が説明されます。

その意味とは「最高のスクールアイドルを決定する」「スクールアイドルの祭典」でした。

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全国から「ランキング上位」のスクールアイドルを選抜し、「トーナメント戦」において闘わせ、最も「観客から支持を得た」「スクールアイドル」を決めようという試み。「学校を廃校から救うため」「スクールアイドル」を始めたものの、「スクールアイドル」としての目標に関しては曖昧だった「μ's」にとっては、これ以上ない舞台。この舞台に上がり、上位入賞することが出来れば、「学校の存在を広く認知させる」という目標にも見事に合致します。

物語...という観点から考えても、この「ラブライブ」という舞台設定は「ゴールを明確にする」効果をもたらします。

視聴者としてはラブライブで優勝することが、彼女達のゴールなんだな」と自然と理解が出来るからです。とはいえ、その「理解」は後々覆されることにもなるわけですが、それはその時に。

またこの「観客から支持を得る」という「勝利条件」が、物語における「キーポイント」にもなっていきます。「ラブライブ」という物語の「思想」を理解するためには結構大事なポイントにもなってくるので、是非頭の片隅にでも置いておいていただけると幸いです。

 

☆その2 理事長の「ぶれない方針」

以前、絵里からの「生徒会も廃校阻止のため独自に活動させてほしい」という申し出を、にべもなく「断った」理事長。

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彼女の発想の根底には「教育者としての矜持」があることは、第4話考察でも触れた通りです。

ishidamashii.hatenablog.com

今回も「ラブライブにエントリーしたい」という穂乃果たちの申し出を了承する一方、絵里からの「生徒会としての廃校阻止活動」には変わらず許可を与えません。絵里はそんな理事長の理屈が理解できません。「同じ目標のもとに活動しているはずなのに、なぜ差別するのか?」と考えているからです。

とはいえ、理事長の中にははっきりとした線引きがあります。その線引きのポイントとは「誰かのため」ではなく「自分のため」の活動になっているか?という部分にあります。

μ'sは確かに穂乃果が「廃校阻止」を目的として立ち上げたグループ。「ラブライブ」への「エントリー」も「対外的」には、その活動の一環として捉えられます。ただし、彼女達のなかで「ラブライブへのエントリー」の本質は、既に「別の部分」にあります。「スクールアイドル」として活動する中で「自分たちの価値を証明」し「目標に向けて成長したい」。「学校のため」だけでなく「自分たちのため」という視点がそこにはあります。理事長はその本質も見抜いているからこそ、彼女達の申し出を否定しないわけです。

「自分たちの成長」のための「挑戦」であれば、それを「否定」や「阻止」はしない。それは、理事長が「教育者としての矜持」を強く持っていることの現れです。反面絵里の活動の要点は「学校の廃校を阻止すること」の一点に限られます。そこには「他者の為」の視点はあっても「自分の為」の視点が欠如している。だからこそ理事長は首を縦に振らないわけです。

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この辺りは8話終盤で希からも指摘される要素。「ラブライブ」という作品に通底する「価値観」とも関係している思想なので、作品を読み解く上でも大事なポイントになってきます。またこの思想は結果的に絵里のことも「救う」ことになります。

また理事長は「μ'sの活動に一定の理解」を示しながらも、「テストで赤点を取った場合にはその限りではない」という条件をしっかりと付けます。このあたりも彼女のバランス感覚の高さを感じる部分です。あくまでも「学生は勉強が本分」であることを示しながら、「それさえクリアすれば何をしても良い」と「適度なハードル」を示す感覚。絶妙なさじ加減だなぁと感じる部分ですね。

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まぁ、一部メンバーには「高い高いハードル」のようですが(笑)。

 

☆その3 μ'sを助ける希

これまでも、ことあるごとにμ'sに助け船を出してきた「副生徒会長」の。今回もにこの勉強を見る役割を買って出ます。

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彼女が「μ'sに肩入れする理由」は今なお不明。しかし彼女がμ'sに対して「期待していること」は、この7話8話を通して明かされることになります。

今回μ'sと絵里を「繋ぐ」という部分において、キーマンとなる希。彼女が明かす情報、そして発する言葉が、今回だけでなく、後々の物語にも影響を与えていくことになります。

 

☆その4 亜里沙

絵里の妹である亜里沙。彼女は7話で初登場となりました。

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絵里とは3歳違い。この春ロシアからやってきたばかりという彼女は、絵里と違い(?)どこか「純粋無垢」な印象を与えるキャラクターです。

彼女がミニプレイヤーで見ているのは「μ'sのファーストライブの動画」。しかもネットで配布されているものとは、別カットの動画を含む超レア映像。この動画の出所は後々明かされるわけですが...。

作中で最も早く登場した「μ'sのファン」である彼女。そんな彼女はμ''sの活動においても度々「キーマン」として活躍する存在になっていきます。彼女がμ'sに抱く「素直な憧れ」。そして「μ'sが好き」であるという気持ちが、何度となくμ'sを救うのです。またμ'sに迷いを与えたりもするのですが...。

7話8話に限って言えば、彼女は「μ's」と「絵里」を繋ぐ、もう一人のキーマンと呼べる存在。彼女の言葉が、そして「想い」が、絵里にも強い影響を与えます。

 

☆その5 「絵里の視点」と「過去」、「海未の気づき」

公園において海未と対峙することになる絵里。ただしお互いの言葉はかみ合っていきません。「絵里が何故μ'sを目の敵にするのか」を知りたい海未と、それには一切答えずに「μ'sをはじめとしたスクールアイドル全体が素人に見える」と断定する絵里。

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絵里のバックボーンを知らない海未にとっては、その発言は「スクールアイドルとして日々努力している」自分たちに対する侮辱そのもの。怒りを見せる海未にも、絵里の態度は崩れません。彼女をここまでに頑なにさせるバックボーンがどこにあるのか。海未は絵里の親友である希にその「真意」を訪ねることになります。

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希から明かされた「絵里の過去」。それは彼女がロシアに滞在していたころ、本気で「バレリーナ」を目指し、日々レッスンをしていたということ。そして一定の評価を受けていたということ。それにも関わらず「夢に破れた」ということでした。

インターネット上に配信されていた「過去の絵里のバレエ」映像。そのクオリティの高さに衝撃を受ける海未。ようやく絵里の「発言の真意」を理解するに至ります。

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「確かに彼女にとっては自分たちのダンスは遊んでいるようにしか見えないかもしれない...。」

その思いは、海未の心の中で「大きな闇」として広がっていきます。「自分たちが楽しむ」そして「見る人を楽しい気分にさせる」ことの先にある「人を感動させる」という要素。そのために必要な「クオリティ」。それを「教えることの出来ない自分」に対してのジレンマを抱えることになる海未。彼女の中に産まれた「迷い」が物語の重要な要素になっていきます。

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絵里が持つ「ダンサー」としての視点は、確かに「間違い」ではありません。真剣にダンスに向き合う人間からすれば「お遊び」にしか見えないかもしれない「アイドルのダンス」。とはいえ、そこには一つ「大切な視点」が抜けています。その「視点」に気付くことが、絵里にとっても大きな一歩になるわけですが、それはまた後程。

 

☆その6 迫る「廃校」

テストの結果、全員が「赤点」を免れたμ's。晴れて「ラブライブ」に向けての練習を再開させます。

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そんな晴れやかなメンバーの心を揺さぶる衝撃的な言葉「廃校決定」という文言が理事長室から聞こえてきたことでメンバーは騒然。物語も一気に緊張感を帯びます。

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とはいえ、これは「8話への期待感」を煽る為のブリッジ。本来はオープンキャンパスでの反応如何で来年度の生徒募集を止める」という内容でした。

とりあえず即時の「廃校」ではなかったことにホッと胸をなで下ろすメンバー。とはいえ「廃校」がいよいよ現実味を帯びてきたことで、嫌が応にも焦りを感じ始めます。

それは生徒会長である絵里も同じ。もはや理事長の指示通りに動いていられないと「自らも廃校阻止のために活動する」と言い残し、理事長室を出ていきます。

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「どうするつもり?」

絵里に問いかける希。彼女が示したタロットカードは星の「逆位置」。つまり「希望がみえない」現状を示したカードです。

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「廃校」への具体的な「タイムリミット」が見え始める中で、物語も急激に動き出します。

 

☆その7 「人を魅了する」「ダンス」

海未の心は未だ闇に包まれた状況。「オープンキャンパス」でのパフォーマンスの精度を高めていかなければならない中で、「μ'sの現状とクオリティ」に納得がいきません。

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「自分たちが楽しむ」あるいは「アイドルファンを楽しませる」ためには十分なクオリティにあるのかもしれない「自分たちのパフォーマンス」。反面、見る人全てを「魅了する」ようなクオリティには達していないように思えてなりません。これでは「オープンキャンパスで一定の評価を得る」ことはもちろん、目標とする「ラブライブ出場」を勝ち取ることはできない。

アスリート故に「基礎的な体力トレーニング」であれば教えてこれた海未。反面「ダンスに関しては素人」。「自分自身の限界」を知るからこそ、プラスワンモアの必要性を最も実感しているのも海未です。

迷いの中で海未が出した一つの結論。それは絵里から「教えを請う」ことでした。当然反発するメンバー。絵里と自分たちの関係は決して良好とはいえません。まず「引き受けてくれる」とは考えづらいからです。とはいえ自分たちをもう1グレード「高める」ためには彼女の力が必要。そう考えるからこそ、無理を承知で海未はメンバーに提案をします。海未の発案を受け入れたのは、やはり穂乃果。「自分たちの身の回りに凄い人がいるのなら、ダメ元でお願いしてみよう」。彼女のポジティブな思考が、μ'sと絵里とを近づけていきます。

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また、「オープンキャンパス」と「ラブライブ」という二つの「イベント」を通して、初めて自分たちを「相対化」して見る事の重要性を感じた海未。彼女の発想がμ'sだけでなく、絵里を救っていくことにもなります。

初期PVでは絵里との関係性が強いように見える描写が多かった海未。プロジェクトが進むにつれて徐々にオミットされていったその要素を、「精神性の類似性」という形で復活させ、後々のシーンへも滞りなく繋げていく...という脚本バランスは、最終シーンへと「滞りなく繋げていくため」の準備にもなっています。またそういった形で「初期PV」の要素をアニメ本編へ加えていくのは、「プロジェクト発足当時」から応援しているファンに対しての「目配せ」という意味でも非常に「上手い演出」だなと感じました。

 

☆その8「絵里」の「やりたいこと」

自分なりの「オープンキャンパスイベント」を考えていく絵里。しかしその内容は決して「面白いもの」とはいえない内容です。

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絵里が示す内容にはっきりと「拒否」を示す亜里沙

「これが本当にお姉ちゃんのやりたいことなの?」

「お姉ちゃんが本当にやりたいことって何?」

自分にとっての「やりたいこと」が「学校を存続させること」なのだと言い張る絵里、それを否定する亜里沙亜里沙の指摘は的確で、それ故に絵里は心を揺さぶられます。

「やるべきこと」と「やりたいこと」は本来別のはず。にも関わらず絵里の中ではそれが「混在」してしまっています。絵里自身も「分かっていなかった」問題の本質が、二人の会話をきっかけに「浮き彫り」になります。

「やりたいこと」を見失っている絵里。そんな彼女のもとにやってくるμ's。彼女達は絵里に「ダンスレッスンの指導」を直訴します。

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反目しているはずの相手からの意外な呼びかけに驚く絵里。しかし「自分のやりたいこと」を見失っていることを自覚している絵里は、「自分に欠けている要素」をしっかりと持ち、周囲から一定の評価も得始めたμ'sを自らの目で「見極めたい」と考えたのでしょうか。この申し出を受けることになります。

希がつぶやく「星が動き始めた」という言葉の通り、幸運に向かう星の流れが、ようやく「生まれた」瞬間となりました。

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☆その9 絵里の教え

ダンスに関する基礎を叩きこむ絵里。彼女の言葉は厳しいながらも、至極まっとうなものばかりです。

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「クオリティに差が出るのは基礎が出来ていないから」

柔軟とバランス訓練に重点を置く絵里の指導は、確かに今までμ'sに欠けていた要素の一つです。

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「鬼教官」も「アイドルの先生」も教えられなかったことを「教えてくれる存在」。それはμ'sにとって貴重な存在となります。だからこそ、いかに厳しくとも彼女たちは絵里に「感謝」の念を伝えます。そしてそんな彼女達の姿勢が、絵里の頑なな心を次第に溶かしていきます。

 

☆その10 「元気をくれる存在」

その日の夜。改めて亜里沙にμ'sの魅力を聞き出そうとする絵里。亜里沙が何度も見ている「これからのSomeday」のPVを「まるでなっていない」と切り捨てます。

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亜里沙は「お姉ちゃんに比べればそうだけど...」と前置きしたうえで、「でも元気がもらえるんだ」とμ'sを総括します。

例えダンスのクオリティがアベレージ以下だとしても、強烈なインプレッションを与えることが出来る。それは「アイドル」ならではの「独自性」かもしれません。絵里の中に欠けていた「視点」を補完する亜里沙。彼女の言葉が絵里の視野を広げる要因になりました。

また、この見ている人に「元気を与える」=「笑顔にする」という「目標」は、にこがμ'sに「一番最初にあたえた命題」でもあります。即ち「アイドルの先生」である「にこの視点」はしっかりμ'sの「土台」として根付き、それが亜里沙にも影響を与えたということ。それがハッキリと分かる描写になっているわけです。

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「絵里の視点」や「考え」が「μ'sに影響を与える」だけでなく、これまでの経緯から「μ'sが生み出してきた要素」が「絵里にも影響を与える」という視点は、物語構造としてもしっかりと配慮された構成だなぁと感じます。

 

☆その11 絵里の迷いと惑い

翌日屋上を自ら訪れる絵里。自分に真っ直ぐな視線をぶつけてくる穂乃果に、思わず「上手くなるとは限らないのに練習を続けて辛くないのか?」と本音をぶつけます。

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それに対する穂乃果の回答は「やりたいから」というシンプルなもの。「やりたいことだから辛くても耐えられる」。その真っ直ぐでぶれない答えが、絵里に動揺を与えます。思わず屋上から出ていく絵里。

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「自分のやりたいこと」とは何なのか。それを自問自答する絵里。ふと現れた希が語るのは「絵里の本当にやりたいこと」が分からないということ。「いつも誰かのためばっかり」に活動して「自分のためには何もしていない」。

そして「廃校阻止」という「行動」も「生徒会長としての義務感」からの行動で、決して「絵里自身がやりたいこと」ではないということ。だからこそ、理事長は「絵里の活動を制止したのではないか」という問いかけ。

そして問われる「エリチの本当にやりたいことは?」という問いかけに、いよいよ絵里も爆発してしまいます。

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「私だって好きなことだけやって、それでなんとなるんだったらそうしたいわよ!」

思わず溢れ出す涙。これまで「鉄の生徒会長」という印象を与えてきた絵里。そんな彼女がこぼす涙だからこそ、視聴者の胸にも響きます。

「自分が不器用なのは分かってる...!」「でもっ...!今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う...?」

かつては「好きなことだけ」をやって、それで「なんとかなる」と信じていた絵里。しかしその思いは「挫折」という体験の前に裏切られてしまいました。それ以来、何をおいても「自分の為」には頑張れなくなってしまった絵里。彼女が抱える「鬱屈した思い」と、それ故に「ひねくれてしまった心」は、既に彼女自身でも制御できないものになってしまっています。

そんな彼女の心を解きほぐし、救えるのは、とてもシンプルに、彼女の思いを「受け入れる場所」です。

 

☆その12「本当にやりたいことはいつもこんな風に始まる」

空き教室で頬杖をつく絵里。いつかどこかで見たことのあるシーンに、旧来のファンの期待値は嫌が応にも高まります。

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手を差し伸べる穂乃果。後ろにはμ'sのメンバーが勢ぞろいしています。

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「絵里先輩!μ'sに入って下さい」

思わぬ場面で希に対して溢れ出した「本当にやりたいこと」という「本音」。その「本音」とは「スクールアイドルになる」ことでした。この期に及んでもなお、自分の「本音」を否定する絵里。「やりたいこと」への「理由付け」に拘る彼女に希が告げた言葉。それは「スクールアイドル」における考え方の「基礎」となるもの。

「別に理由なんて必要ない」「やりたいからやってみる」「本当にやりたいことって、いつもそんな感じで始まるんやない?」

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「始める」ことに対して何かと「理由付け」を必要とする「現代」。そんな時代において、「まずはやりたいならやってみるべき」という考え方を頒布するのが、「ラブライブ」が作品としてもつ「テーマ」の一つ。ともすれば、希のこの言葉は「ラブライブ」という作品を理解するうえで「ポイント」となる言葉でもあります。

「考える前に飛び込め」という思想は、TVシリーズだけでなく、「劇場版」そして「サンシャイン」へと引き継がれていく「ラブライブ」にとって普遍的なテーマ。だからこそ、このシーンと台詞が作品全体に置いて持つ重要性は高いと、個人的には考えています。

希の言葉に導かれるように、穂乃果の手を握り返す絵里。かくして絵里を加えたμ'sは8人になりました。

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すると即座に9人目のメンバーとして加入を表明する希。彼女は最初からこのグループは9人となった時真価を発揮する...と考えていたことを明かします。

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「9人になる」ことを見越していたからこそ「9人の芸術の女神=ミューズ」という名前をグループに提案したことを明かす希。なんと彼女がグループの名付け親なのでした。

かくして9人となったμ's。遂に、真の意味での「μ's」が完成しました。

 

☆その13「僕らのLIVE 君とのLIFE」

遂に9人となったμ's。彼女達が「オープンキャンパス」で披露するのは、「スタートの曲」です。

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披露されるのは僕らのLIVE 君とのLIFE

まだ彼女達が「海のものとも山のものともつかなかった時代」。彼女達がまだ「μ's」では「なかった頃」のデビュー曲。コミケでひっそりと披露され、発売された曲。それが、3年の時を経て、TVアニメに登場し、なおかつ「リブート」される。昔から応援してきたファンにとって、これ以上のご褒美はないでしょう。


【ラブライブ!】「僕らのLIVE 君とのLIFE」PV(ショートサイズver.)

歌詞の内容もまた、今回の物語と一致するもの。

 「無茶に挑むこと」を肯定し、「挑み続ける姿勢」を称賛する。「やりたいことに真っ直ぐに挑むこと」を讃える。そんなラブライブ」の「全て」が詰まった楽曲。その真っ直ぐな歌詞は、まさに彼女達の「スタートの曲」と呼んでふさわしいものです。

 

☆その14 歌うように生きてよい。

μ'sと出会うことで、再び「夢に真っ直ぐに向き合えるようになった」絵里。彼女の頑なになっていた心もまた「ぼららら」によって救われたように思えます。

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「僕らのLIVE 君とのLIFE」というタイトル。

これは「LIVE(ライブ)」=「歌う事」と「LIVE(リブ)」=「生きる事」をダブルミーニングで表現した上で、さらにそこに「LIFE」=「生活」を掛け合わせたタイトル構造になっています。

そこから感じるのは、「歌うように生き、歌うように生活してほしい」という思想です。人は「歌うこと」でストレスをかなり発散できるという検証結果もあるように、「歌うこと」は人間にとっての「喜び」にも繋がっていきます。

ともすれば「ストレス」を抱えがちな現代社会において、もしも「歌いながら」あるいは「歌うように」生きることが出来れば、多くの人がもっと幸せになれるのでは?この楽曲からはそんな「問いかけ」をも感じるのです。

「同じ出来事」でも「自分の捉え方次第で良い方向に変わる」というのは、劇場版ラブライブでは繰り返し描かれたテーマでした。この楽曲からも同じような思想を感じると共に、ラブライブに一環して流れる「イデオロギー」があることも実感できますね。

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太陽を眩しげに、それでいて心地よく見つめる絵里。この瞬間、彼女の耳には「SUNNY DAY SONG」が聞こえていたのでは?そんな風に思います。

 

というわけで7話8話考察でした。考察というよりも、ストーリーの流れ説明みたいな記事でしたが、いかがだったでしょうかw

さて、9人となったμ's。次回はこれまでピックアップされなかった南ことりに迫った異色回「ワンダーゾーン」です。

恐らく「サブストーリー」として受け取られがちな回だと思うのですが、こちらも「ラブライブ」という作品を考える上では非常に重要な、普遍的なテーマを抱えた回だと思いますので、しっかりと考察していきたいと思います。

それではまた来週くらいにお会いしましょう♪

 

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