こんにちは、あるいは、こんばんは。
読んでも毒にも薬にもならないブログ「Love Live After talk」でございます。
今回もアナタの人生に特に彩を与えない考察を書いていきたいと思います。
通勤・通学電車の中。またはお昼休みに。あるいは「定時まであと1時間か。。適当に仕事してるふりするか~」という場面などなど..適宜読んでいただけたら幸いです。
さて、今回は第4話「まきりんぱな」。前回手痛い「敗戦」を経験したμ's。しかし彼女達はめげずにスクールアイドル活動継続を宣言します。
この第4話はそんな彼女達の「第2章」スタートを描いた回。それだけに非常に大切な要素が詰まった回でもあります。なるべく手短にまとめられるよう留意しますが、長くなったらゴメンナサイ...。
■第4話STORY
失敗に終わったファーストライブ。しかしライブから得た手応えと、「歌って踊る事」そのものの楽しさを実感したμ'sは活動継続を宣言。「いつか講堂を満員にする」ことを宣言します。チラシ配りを中心とした地道な活動を続けつつ、まずは「部」としての承認を得られる「部員5名」を目指すμ's。そんな中ライブに唯一駆け付けてくれた1年生=小泉花陽と遭遇。穂乃果は彼女をグループに誘いますが、花陽は同じ一年生の真姫を代わりに推薦し、逃げてしまいます。とはいえ、本当は「スクールアイドル」に興味津々な花陽。スクールアイドルをやりたいはずなのに、煮え切らない様子の花陽を心配するのは親友である凛。彼女を「スクールアイドル部」へ加入させようと試みますが、花陽は凛に「私がスクールアイドルになったら一緒にやってくれる?」と問いかけます。そんな花陽の誘いに動揺する凛。どうやら彼女も「複雑な内面」を抱えているようですが...。もやもやを抱える中、放課後廊下の一点を見つめる真姫の姿を目撃する花陽。彼女が立ち去ったあとを見ると、そこにはスクールアイドル募集のチラシと彼女の「落し物」が。落し物は真姫の学生証。それを届けるべく真姫の家に立ち寄る花陽。そこで真姫に「自分は真姫の歌のファンで、真姫の歌を聴くために放課後よく音楽室を通りかかっていた事」を告白する花陽。真姫はその事実を照れくさく受け止めつつも、どこか冷めた様子。「私、大学は医学部って決まってるの」「私の音楽は終わってるってわけ」そんな言葉と共に、ふと遠くを見つめる真姫。その瞳はなんとなく寂しげです。互いの境遇を話し合うことでなんとなく心を通わせた二人。真姫は「花陽がスクールアイドルになれるよう、ちょっとだけなら応援する」と語ります。帰り道偶然立ち寄った和菓子屋。そこは穂乃果の実家”穂むら”でした。そこでなしくずしに現μ'sメンバーと雑談をすることになった花陽。ことりが見せてくれたμ'sのライブ動画を食い入るように見つめる花陽。その真剣さはμ'sのメンバーにも伝わります。穂乃果たちの再びの誘いを「私向いてないので...」と断る花陽。しかし穂乃果、ことり、海未は、それぞれ自分たちが「アイドルとしての欠点を持っていること」を語ります。その上で「普通のアイドルなら私たちは失格」「でもスクールアイドルならやりたい気持ちがあれば出来る」と説得。その言葉は花陽に勇気を与えます。翌日、いよいよ決意を固めた花陽。しかし授業中の失敗で気持ちまたも元通り。そんな様子を見かねた真姫は、彼女に自信を与えようと、音楽家らしく「発声」のアドバイスを送ります。時を同じくして花陽を穂乃果たちのもとへ連れて行こうとする凛。花陽の対処を巡って争う二人は、結局同時に花陽を屋上に連れて行く形で決着。改めて花陽がいかに「アイドルに向いているか」を本人に語る真姫と凛。「やってみたいのなら、やって見た方が良い」二人の熱い思いを受け止めた花陽はようやく一歩踏み出します。自分のこと、そしてアイドルへの思い...。いつもの弱弱しい口調ではなく、ハッキリとした強い口調で自分の気持ちを話す花陽は、自らに課していたカセを乗り越えたように見えます。花陽の熱い気持ちを受け止めた穂乃果。二人はガッチリと握手を交わし、新たなμ'sが誕生します。花陽の加入を自分のことのように喜ぶ凛と真姫。穂乃果たちはそんな二人もメンバーへと誘います。顔を見合わせる凛と真姫...。紆余曲折ありましたが、花陽、真姫、凛の3人が加わったμ'sは6人に。ファーストライブ以降のリスタートは順風満帆。しかしそれを良く思わない影が一つ。さて彼女の正体は何者なのでしょうか...。
■第4話での登場人物プロフィール
ファーストライブのショックはほぼなし。部員を増やすべく、まずは花陽に声をかける。スクールアイドルに対して積極的になれない花陽を無理に誘うのではなく、彼女の判断を待つことにする。結果4話では穂乃果は能動的に動かず。今回は穂乃果が中心にならない...という意味で「ラブライブ」の中でも珍しいエピソードかもしれない。
・南ことり
唐突にアルパカに夢中に(笑)。しかしそんなことりの「新しい趣味」が花陽とμ'sとを再び引き合わせる。今回は穂乃果と同じく2年生組は主体的には動かない。しかし花陽に「スクールアイドルとはなんぞや」を語ることで、花陽の「アイドル」に対する「恐れ」を無くす役割を果たす。
・園田海未
穂乃果・ことりと同じく今回はそれほど目立つ活躍はなし。穂乃果の部屋で一人「アイドル自主練」を繰り返すなど、やはりアスリートとして自己鍛錬は怠らない。それを花陽に目撃されたのは痛恨だったが(笑)。
・小泉花陽
第4話での実質的な主人公。花陽が動くことで物語が動き、「花陽の決意」によってμ'sの第2章、そして「スクールアイドルの伝説」が始まる。詳しくは本文にて。
・星空凛
花陽の幼馴染に相応しく、彼女が本音を言えない時に出す「クセ」を熟知。それをきっかけに「花陽の本音」に気付く。一人では穂乃果のもとに行けない気弱な花陽のサポートを申し出るも、「私がやったら凛ちゃんも一緒にスクールアイドルやってくれる?」という問いかけには狼狽する。彼女が抱えるカルマは実は1期では解決せず、2期まで持越しとなる。凛の話はその時にでも。
花陽、凛と同じく、今回のメインキャスト。彼女自身が自分に言い聞かせるように語る「終わった」はずの音楽の夢。ただしそれに本当の意味で「納得」出来ているのか...?というのが彼女の課題。
・絢瀬絵里
μ'sのライブ活動が無意味では?と理事長に問いかける。「学生の行動を学校が阻止するわけにはいかない」という理事長の言葉尻を取って、「生徒会も独自の活動がしたい」と申し出るも、そちらは否定されてしまう。理事長から見せられたμ'sのライブ動画に動揺。これ、誰が撮ってたんすかねぇ...。
・東條希
登場シーンは絵里と同じシーンのみ。μ'sのライブ動画に動揺する絵里の姿に、何か思う所がある様子...?
・矢澤にこ
出番はラストシーンのみ。不敵な笑みを浮かべ、μ'sのページにアンチコメントを書き残す不穏な存在。因みにAAを手打ちしていた。職人かよ。
■第4話を読み解くポイント
☆その1 主人公=花陽
冒頭登場するのは1年生の花陽。そしてスクールアイドルメンバー募集のチラシ。
花陽の脳内を駆け巡るのは過去の回想。幼少期からアイドルに憧れ、「いつかアイドルになりたい」と願い続けてきた花陽。
故に「スクールアイドル」も追いかけてきた彼女にとって、校内に「スクールアイドル」が誕生し、メンバーを募集しているという状況は「渡りに船」。しかし、どうしても一歩が踏み出せません。その理由は...。
声が小さく、人見知りで、アガリ症であること。そしてその事実が彼女自身から「自信」を失わせている事。「ダメだよね、こんなんじゃ...。」
「願い」を、「夢」を持ちながら、どうしても自分の「可能性」に制限をつけて大事な一歩が踏み出せない花陽。今回はそんな花陽を主人公とし、彼女の「葛藤」と「成長」を描く物語です。
そしてそれは同時に「ラブライブ」というシリーズそのものが持つ普遍的な「テーマ」をも示す物語にもなっています。自分を「過小評価」し、「夢」へと踏み込めない花陽。今回は彼女が辿る物語を追いかけていきましょう。
☆その2 小泉花陽の葛藤
花陽には「夢」があります。それは「アイドル」になること。小学生の頃からアイドルに憧れ、「振り付け」も「歌」も完璧に覚えていた...という花陽。しかし成長するにつれ「夢」と「自分の現状」の「差」に苦しむことになります。
声が小さく、引っ込み思案。大勢の前で話せないアガリ症。そういった自分の「現状」を見つめる度に「アイドルに必要とされる要素」とのギャップを感じてしまう花陽。彼女にとって次第にその「現状」が足枷となり、「夢」を語れなくなりました。
4話冒頭、穂乃果から直接「μ's」への勧誘を受ける花陽。しかし彼女は同じ1年生の真姫を推薦する形で穂乃果から逃げてしまいます。
自分の夢を叶えるためには「渡りに船」といえる穂乃果の誘い。しかしそんな「もってこいのお誘い」にも乗れない花陽。彼女の抱える悩みは深刻です。
この4話では花陽が抱えるこの「葛藤」をいかにして「花陽本人」が乗り越えていくか...がキーポイントになっていきます。
花陽に必要なのは、自分の価値を認めてくれる「他者」と、それをきっかけにして起こる「自己肯定」ならびに「自己の再評価」です。
とはいえ、花陽にはもとから一人、絶対的に「自分の価値を認めてくれる他者」がいます。それは幼馴染にして親友の星空凛です。
☆その3 星空凛の現状
部活を決めかねている花陽を心配する凛。幼い頃からある「本音を隠す際に見せるクセ」を通して、花陽の本音を見抜きます。
「大丈夫!かよちん可愛いから人気出るよ」
一見軽口のように聞こえる凛の花陽への評価。しかしこの評価は紛うことなき「凛の本音」です。
実は星空凛という人は、「適当なこと」が言えないキャラクターです。彼女は、にこと初めて遭遇した日、メンバーがにこのご機嫌を取ろうとする中で、唯一彼女の自己紹介を「ちょっとサムい気がするにゃー」と言ってしまう率直さがあります(笑)。
とはいえ、思ったこと、感じたことを率直に話し、相手に伝える実直さは凛の特長でもあります。恐らく凛は幼少期から「花陽は可愛い」と言い続けているのでしょう。それだけ凛の花陽に対する評価は確固たるもの。...なはずなのですが、反面「凛からしかその評価を得ていない」花陽は、評価そのものに対しての「慣れ」があり、どこかそれを信じられなくなっているのでしょう。
故に終盤「凛から花陽への評価」が「再度」行われるわけですが、そのあたりは後程触れるようにします。
...花陽の性格を熟知する凛は、花陽を半ば強引に穂乃果のもとへ連れて行こうとします。しかしそれを拒否する花陽。その際花陽は凛に対して一つ「お願い」をします。
「私がスクールアイドルになったら、凛ちゃんも一緒にやってくれる?」
この「お願い」は凛にとっては「予想外」のものでした。明らかに狼狽する凛。「凛にアイドルは似合わないよ、男の子っぽいし、髪だってこんなに短いし...」と一転「自分がアイドルに向かない理由」を言い訳し始めます。
「ほら、あの時だって...」と語り始めるのは幼少期の思い出。
いつもズボンでボーイッシュな印象のあった凛。珍しくスカートで登校した際に男子に囃し立てられ、それが元で着替えに戻ったこと。
※劇中はマイルドな表現になっていましたが、実際はもっと口汚く罵られたに決まっています!小学生男子の遠慮の無さ足るやないですからね!おのれ、凛ちゃんにトラウマを与えるとは許すまじ....!!!(気持ち悪い文章)
後から振り返れば「なんでそんなことをいつまでも」と思うかもしれませんが、幼少時に得た心の傷というのはなかなか癒えないものです。それが「差別」であれば、より深刻なもの。
また、この回想を以て、初めて星空凛という人も「複雑な内面」を抱えたキャラクターであることが視聴者には明らかにされます。そして彼女抱えるカルマもまた「自分を過小評価」し、「自分のやりたいこと」にまっすぐに向かえない...という「花陽と同じもの」であることが分かるわけです。
今回の第4話、確かに主人公は花陽ではあるのですが、「花陽が葛藤を乗り越える」ことは同時に「凛が葛藤を乗り越える」ことにも繋がっていきます。故にタイトルには「りん」の名前も入っているのでしょう。
さて、となると気になるのはタイトルに入っているもう一人のこと。
☆その4 西木野真姫の現状
真姫の生徒手帳を拾ったことで西木野家を訪れることになる花陽。
訪れた家は大豪邸。思わず慄きます。
大豪邸の理由は「真姫が病院経営者の一人娘だから」という事情。そこで真姫の母親から告げられる「あの娘、うちの病院を継ぐことになってるから」という無邪気な「将来の確定」。
2話考察でも少しだけ触れた「真姫の現状」。彼女がどこか孤独なのは、既に「確定された未来」が彼女の心の「カセ」になっているからなのでしょう。
人を寄せ付けない雰囲気を持つ真姫と、人見知りの花陽。同じクラスでありながらこれまでほとんど会話を交わしたこと無い二人。しかし花陽は意を決して、一つの告白をします。それは自分が「真姫の歌のファン」であること。
放課後、音楽室から聞こえてくる「真姫の歌」を聞くために、そっと音楽室を通りがかっていたこと。真姫にとっては、穂乃果に次いで二人目の「自分の音楽の発見者」にして「ファン」となった花陽。その率直なラブコールに少し照れながらも、しかし表情はどこか冷めています。
「私ね、大学は医学部って決まってるの」「だから私の音楽はもう終わってる...ってわけ」
そう告げ、どこか遠くを見つめる真姫。その瞳には簡単に読み取れない様々な感情が渦巻いています。
凛と同じく、思った以上に「複雑」なキャラクター造形をもつ真姫。彼女は両親を「尊敬」し「敬愛」しています。故に「病院を継ぐ」ことにも大きな異議があるわけではありません。しかし、だからこそ行き場を無くしている「一つの思い」があります。それは「音楽に対する思い」です。
自分に課せられている「役割」や、「期待」には「満足」しているし、それには「応えたい」。その反面、自分が「本当にやりたいこと」に対する思いの行き場所を失っている真姫。
それをどう消化すれば良いのか分からないから、彼女は放課後、一人音楽室でピアノを弾き語る。誰に聞いてほしいわけでもなく、思いの行き場所をそこにぶつけるしかないから。だけど、もしかしたら、それを「誰か」に見つけてほしいのかもしれない。「病院を継ぐ」以外の、「音楽」を中心とした自分の「未来」がどこかにあるかもしれない。その「可能性」を、「未練」を捨てきれない...そんなモヤモヤが真姫というキャラクターの中には渦巻いています。
ここから真姫もまた「やりたいこと」に真っ直ぐに向かえない「葛藤」を抱えた人物であることが明らかになります。すなわち「真姫・凛・花陽」はそれぞれ同じ「葛藤」を抱えた人物である...ということになるわけです。
「やりたいならやればいいじゃない」「私も少しは応援してあげる」
自らの現状を話したことで、少しだけ心が近づいた二人。またその現状を通じてシンパシーを得たことで、真姫は「花陽を応援する」と宣言します。
また「自分がやりたくっても、どうにもできない人」がいることを知ることで、花陽は「自分は恵まれているのかも」と考え直すきっかけを得ました。
そして真姫もまた「花陽を応援する」中で、改めて「自分」と「音楽」、ひいては「スクールアイドル」に対する思いを見つめ直すことになります。
「やりたいならやってみればいい」その言葉は自分にも跳ね返ってくるわけです。
☆その5 教育者としての理事長の矜持
さて、お話を一旦「まきりんぱな」の3人から外しましょう。
時を同じくして理事長室には生徒会長と副会長、すなわち絵里と希の二人がいます。二人が理事長に語っているのは「μ'sのファーストライブ」に関する報告。
「客が全く来なかった」ことを引き合いに「スクールアイドル活動」が無意味であることを語る絵里。「活動を止めさせるべき」と進言します。
しかし理事長はその訴えを拒否。
「生徒の活動を学校の一存で制限できない」と。
しかし、絵里が引き出したかったのは「スクールアイドル活動の制限」ではなく「この一言」でした。
「だとすれば、生徒会も独自に廃校阻止のための活動をさせてほしい」
理事長の発言を見越したうえで、それを利用する...。ちょっとズルいですが、クレバーな交渉術を見せる絵里。しかしその訴えは「あっさりと否定」されます。
とはいえ、絵里の言う通り「スクールアイドル活動」が認可されているのであれば、理屈上は「生徒会も独自に活動」しても良いはず。にも拘わらず理事長がそれを否定する理由はどこにあるのでしょうか。そこもちょろっと考察してみましょう。
出発点としては「廃校阻止」のため、「学校に生徒を集めるため」にスタートした「スクールアイドル活動」。しかし前回の敗戦をきっかけに彼女達がスクールアイドルを続ける理由と目的は変化しました。
スクールアイドル活動そのものに「充実感」を得て、「続けたい」と思ったからこそ、継続を宣言した穂乃果。そしていつか観客が0だった講堂を、自分たちのお客さんで「一杯」にしたい。そこには「廃校阻止」とは別の「目的」が生まれました。
だからこそ、理事長は彼女達の活動を「制限しよう」とは考えないのではないでしょうか。
反面絵里が主張するのは、あくまでも「廃校阻止」を「目的」とした活動の許可。そこには「それ以外の意味」や「価値」がありません。それは本来「教育を受けるべき」立場の「生徒」が行う活動ではない。だからこそ「それはダメよ」とニベもなく断るのでしょう。
こと、魂消るほど「バカな大人」が登場するアニメ作品(に限らず日本映画)が多いなかで、この理事長はしっかりと「大人」としての矜持を発揮するだけでなく、「教育者」としての矜持も発揮してくれました。
「生徒の自主性」や「成長」に重きをおき、「学校のために生徒を利用しない」。こういった視点を「正」として描くことが出来るからこそ、「ラブライブ!」は「NHK教育」で放送するに値する作品として認められたのかなぁ...とふと考えてしまいます。
(故に劇場版で理事長が教育者に相応しくない発言をするのには参りましたがw)
食い下がる絵里の視点を半ば強制的に変えるべく「それにそんなに人気が無いわけでもないみたいですよ」とμ'sの「ファーストライブ」の動画を見せる理事長。何者かが「配信」させた、その動画に一瞬怯む絵里。
ほとんど観客のいなかったあのライブを、いったい誰が「撮影」していたのか?
そしてどういった意図を以て「配信」したのか?
目的は分かりませんが、希は絵里の動揺の理由に思い当る節があるようですね....。
☆その6 穂むらでの雑談。「スクールアイドル」とは。
西木野家からの帰り道、偶然立ち寄った和菓子屋。そこは穂乃果の実家「穂むら」でした。
図らずもμ'sと雑談をすることになった花陽。ことりが持ってきたPCを通して、μ'sの「ファーストライブ」を見ることに。ライブを真剣に見つめる花陽。穂乃果たちが話かけてもその声は耳に入りません。
花陽の「アイドル」への思いの強さを知った穂乃果たち。改めて花陽をメンバーへと誘います。しかし、未だ自分の「カセ」を乗り越えられない花陽。「私、向いていないので」とまたしても逃げてしまいます。そんな花陽に対してことりたちが語ったのは、自分たちもいかに「アイドルとしては未熟か」ということでした。
「プロのアイドルなら私たちはすぐに失格。でもスクールアイドルならやりたいって気持ちをもって、自分たちの目標を持ってやってみることが出来る!」
「それがスクールアイドルだと思います。」
「だからやりたいと思ったらやってみよう!」
穂乃果たちが抱える「課題」は、「自分に自信を持てない」花陽の心を軽くするもの。また、「スクールアイドルに関する定義」は花陽がアイドルに対して持っていた「ハードル」を少しだけ下げる効果をもたらしました。
「やりたいならやってみればいい」
真姫と同じ言葉が穂乃果からも飛び出します。
「やりたいならやってみる」というのは1期通してのキーワードとなる言葉。またそのキーワードを通して穂乃果たちが語る「スクールアイドルとはなんぞや」という定義もシリーズを通じて大切になる考え方。この4話が序盤のキーとなっている所以はこんなところにも表れています。
しかし穂乃果はこの段階で花陽に決断を急かしません。
「ゆっくり考えて答え聞かせて」「私たちはいつでも待ってる」
花陽が「自分の意志」で決めることの意味を見出した3人。その決定を花陽に委ねます。
作劇上の意図として「何故花陽自身の言葉」を重視するのか?というと、これが花陽にとっての「通過儀礼」になっているから...と考えられます。
ラブライブサンシャイン考察でも登場した「通過儀礼」という概念。その意義は「自分自身に課しているカセを自分自身の努力をもってクリアする」ことで「人間的に大きな成長を遂げる」という部分にあります。花陽にとっての通過儀礼は「自らの言葉」で「μ'sへの加入」を直訴すること。この「通過儀礼」を超えない限り、花陽はいつまでたっても「現状を打破」することができません。
いよいよ覚悟を決める花陽。
時を同じくして、自らの殻を破りたい...と願いながら行動に移せない二人が映ります。それは真姫と凛です。
μ'sの動画を見て思い悩む真姫は「音楽への未練」を。
外では決して着ない「可愛い服」に身を包む凛は「女の子らしく可愛い自分を表現したい」という「それぞれのカセ」を抱えています。
彼女達もまた花陽と同じように「自らに課しているカセ」を乗り越える必要があることを、短い1シーンによって表現していますね。
☆その7 背中を押す存在
「やりたいと思ったらやってみる...そうだよね。」いよいよ「スクールアイドル」を始めることを決意する花陽。
しかしその日の授業で張り切って教科書を読んだ結果、噛んでしまい、周囲に笑われてしまいます。それをきっかけに再び膨らみかけていた希望がしぼんでしまう花陽。その様子を心配そうに見つめる二人。
二人はそれぞれの方法で花陽の背中を押します。
花陽の声が小さかったり、言葉を噛んだりするのは発声方法に課題があるから...。そう睨んだ真姫は、正しい発音方法を花陽に教えます。
凛は改めて花陽がいかに「アイドルに向いているか」を本人に力説します。
二人は花陽に足りないもの、そして花陽を花開かさせるために必要な「外的要素」を補てんする存在でもあります。
花陽に足りなかったものの一つ。それは自分の価値を認めてくれる「他者」の存在。ここで凛・真姫の二人はその「評価」を与えます。
二人が花陽を評価する点はそれぞれバラバラですが、他者からの真剣な「自分に対する評価」は花陽の心にも沁み渡ります。「他者の自分への評価」を聞く事によって、「自己肯定」ひいては「自己の再評価」を出来るようになった花陽。「自分を制限していた最大のカセ」=「自己評価の低さ」を覆すことが出来たからこそ、花陽は穂乃果たちに、自らの言葉で「スクールアイドル加入の意志」を示すことが出来るようになるわけです。
※ちなみに凛と真姫が半ば強引に花陽を屋上に連れて行くのは、「花陽が自らの力でカセをクリアする」という描写にとっては足枷になってしまっているようにも思えます。ただし作劇上の意図としては、凛と真姫が花陽と共に屋上にいる必要があり、様々な可能性を模索したうえで、一番違和感のない移動方法として「二人が花陽を屋上に連れて行く」という描写に落ち着いたのでは...と想像しております。
☆その8 花陽の決意
自分のこと、夢、アイドルへの思い。今まで自分自身の言葉を発する事が無かった物静かな花陽。そんな彼女が淡々と、それでいて切に伝える言葉は、拙いながらも聴く者の心を打ちます。
「1年生で、背も小さくて...声も小さくて、人見知りで....。
得意なものも何もないです!
でも....でも! アイドルへの思いだけは誰にも負けないつもりです!!
だから....μ'sのメンバーにしてください!!!」
元より花陽の加入はウェルカムだった穂乃果たち。もちろん断る理由はありません。彼女の手を穂乃果が握ることで、μ'sに新たなメンバーが加わります。ただし、それはメンバーが増える...という以上の大きな意味をもたらしているようにも思えます。
☆その9 幼少期の花陽
物語中盤、アルバムを見つめる花陽。そこには幼少期、アイドルを夢見る自分自身が映っています。
面白いのは、幼少期の花陽が穂乃果と同じ位置に、黄色いリボンをしている...ということ。
穂乃果の特性とは、「自分の夢ややりたいこと」に「ためらわずにまっすぐ進む」こと。幼少期の花陽は、現在の穂乃果と同じく、自分の「夢」に「ためらわず」「真っ直ぐに進んでいた」はず。となると、穂乃果の象徴である「黄色いリボン」は「夢」を象徴する「アイテム」として使用されているような気もしてきます。
花陽のアイコンである「クローバー」が「希望」「信仰」「愛情」を象徴するもの...であることは前回考察でもお話させていただいた通り。
となれば穂乃果と花陽が手をつなぐことは、「夢」と「希望」とが結びつくことを表現したメタファー...とも捉えられます。
「普通」と「希望」を象徴する花陽が、「夢」を象徴する穂乃果と手を繋ぐこと。
それは「普通の少女」でも「希望」を以て取り組むことで「夢」を手にすることが出来る...という思想を象徴するもの。そしてそれが「スクールアイドル」が持つ普遍的な願い。
だからこそ、μ'sは穂乃果と花陽が手を繋ぐことで、「スクールアイドル」としての確かなアイデンティティを手にする。故にこの二人の握手には「大きな意味がある」ように思えるのです。
ちょっと脱線しますが、「ラブライブ!サンシャイン!!」の主人公、千歌に両者を象徴するアイテムである「黄色いリボン」と「クローバー」がデザインされているのは、穂乃果と花陽が「μ's」ひいては「スクールアイドル」を語る文脈の中では「キーマン」になると制作陣が考えているからでは?と前回考察させていただきました。
これまた面白いことに、幼少期の千歌は「黄色いリボン」をしていないことが、作中の描写から明らかになっています。
幼少期には何事にも真剣になれず、臆病な性格だった千歌。そんな彼女がスクールアイドルと出会うことで、「積極性」を手にする。
千歌に穂乃果と花陽の要素が散りばめられているのは、この二人が出会うことで産まれた「スクールアイドル」の価値観を、千歌が引き継いでいることを象徴させるためなのでは?とも思えます。まま、ここは考えすぎなんでしょうけどもw
☆その10 二人はどうする?
花陽の決意を見終えた凛と真姫。その姿に感銘を受け、思わず涙ぐみます。涙の理由はもちろん花陽の必死な姿に感動したから...でもありますが、同時に花陽の姿に「自分を投影したから」かもしれません。
「自分のやりたいこと」「なりたい自分」そんな自己実現を叶えたいと願っているのは、凛も真姫も同じ。花陽を通して「やりたいことをやってみる」ことの意義を感じ、「自分もやってみたい」と思い始めた二人。そんな二人の思いを読み取ったかのようにことりは「二人はどうする?」と凛と真姫もメンバーへと誘います。
「まだまだメンバーは募集中ですよ!」
顔を見合わせる二人。答えは自ずと決まっていました。
凛と真姫を加えたμ'sは一気に6人の大所帯に。
早朝練習に不満を漏らす凛。そんなことでは恐らく陸上部は務まらなかったでしょうなw
練習場に真っ先にいるのは花陽。なんとメガネを外しています。
メガネは「自分を縛り付けていた過去」を象徴するもの...なのかもしれません。メガネをはずした花陽の表情はどこか穏やかです。
真姫から飛び出すのは「メガネをはずしたついでに下の名前で呼んでよ」という謎理論w
なにはともあれ、初めて校内に同世代の友人を手に入れた真姫も、どこか嬉しそうです。
同じような課題を抱え、同じタイミングでμ'sに加入することとなった3人。彼女達が今後μ'sでどのような活躍を見せるのか?それは次回からのお楽しみです。
☆その11 にこ襲来?
順調にメンバーを増やしていくμ's。そんなμ'sを良く思わない人影が。
真っ暗な部屋でμ'sへのアンチコメを書きつける謎の3年生。そういえばμ'sのファーストライブへも顔を出していた謎のツインテール少女。次回はいよいよ彼女がそのベールを脱ぎます。
果たして彼女の狙いとは、そして彼女の登場によってどんな悲劇がμ'sに起きるのかー(棒読み)
それはまた次回の講釈ということで。
...というわけで4話考察でした。
久々に1万字超えましたね。。しかし、「ラブライブ」シリーズを語る上でも欠かせない回だけに仕方ないかと。。
恐らくここと12話13話が1期考察では一番物量割く部分だろうと思っていたので予想通りではあります。
さて次回は矢澤回。ラブライブの「赤木」でお馴染みにこパイセン主役回だけに、気合入れていきますよ。
まずは、ここまでお読み頂きありがとうございました!