Love Live!Aftertalk!

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ラブライブ!サンシャインハイライト 第7話「TOKYO」&第8話「くやしくないの?」

※9/13筆

ちょっと眠すぎて表現が拙かったり、足りない部分があったので大幅に加筆修正しました。

よろしくお願いいたしますm(__)m

またまた空いてしまいました。サーセン(白目)。

さて、いよいよ大事な回7話と8話に突入します。

この2つは2個でセット。

いわばオデュッセイアとかスタンド・バイ・ミーとか「マッドマックス 怒りのデスロード」のような行きて帰りし物語ですので、一緒にやってしまうのがベスト。

決して「ちんたらやってると追いつかないから」ではないですよ。

ええ本当に。。(すっとぼけ)

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■「憧れの場所」であり「相対化される場所」である「TOKYO」へ

 前回発表した楽曲「夢で夜空を照らしたい」はPVの視覚的工夫が受け好評。

スクールアイドルランキングでは99位

急上昇ランキングではトップと、目に見える結果を生みました。

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 そんな上昇気流のAqoursに舞い込んだのはラブライブのスピンオフイベント(?)「東京スクールアイドルワールド」への誘いでした。

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一気の知名度アップを狙うAqoursにとっては「渡りに船」ともいえるこのお誘い。

当然メンバーは参戦へ前向きです。

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しかし「東京」で「他のスクールアイドルと合同のライブイベント」に参加するということは、Aqoursとして初めて静岡県外」に出て、「相対化される」ということ。

イヤでも不穏な空気が漂います。

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「東京憧れギャグ」を炸裂させる「非東京メンバー」のわちゃわちゃが挟まれることで和みをアピールしつつ。。

東京に向かうルビィに、姉ダイヤが託したのは「気持ちを強く持て」というメッセージ。

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言葉の意図が分からないルビィは、思い悩みますが・・・。

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(同じタイミングでリーダーの千歌は、自分の家の近所の景色を見て喜んでいました。アホの子なのかw)

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まぁ、この千歌の表情は「東京」への憧れを示している…のだとは思いますが。。

 

ただし千歌が「東京」に特別な思いを持つのは、単純な「都会への憧れ」だけではなく、そこが「μ'sの聖地」でもあるからです。

■「彼女たちが知っていること」「私たちが知っていること」

「μ's」の聖地を巡る。

それは千歌にとって、今回の「旅」の動機の一つになっています。

しかしここで分かるのは、

「彼女たちが知っていること」と「私たちが知っていること」が違うという事実です。

彼女たちが向かうのは、

μ'sが練習で何度も登った階段。

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神田明神

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万世橋

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そしてUTX高校(秋葉原UDX)。

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などのメジャー所。

「サンシャイン」の世界で「μ's」の物語がどのように語り継がれているのか、今一つ分からないのですが、第3話で2年生の3人が「School idol movie!」での穂乃果の言葉を引用したように(スクールアイドルはこれからも広がっていく~というもの)、それなりの密度で共有されていると考えても良いのでしょう。

ただし、今回登場する「聖地」の中で唯一Aqoursの面々が寄らなかった場所があります。

それは、μ'sが解散を宣言したのち、全員で号泣したあの「駅のホーム」です。

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μ'sのファンであれば、一度は立ち寄ってみたいと思う「あの場所」をあっさりとスルーした、ということはAqoursのメンバーはこの場所の存在自体を「知らない」と考えるのが自然でしょう。

作劇的に考えた場合にも、敢えてここを「出した」にも関わらず、メンバーを立ち寄らせなかった理由は「この場所を知っているのはμ'sと視聴者である我々だけなのである」という事実を明文化させるためでしょう。

ま、そこまでの意味はない、単なるファンサービスの可能性もありますけどね(笑)。

 

■梨子が「まだ戻れない場所」

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神田近くに宿泊するAqours

どうしてもシリアスになりがちな「サンシャイン」では、和ませるためにメンバーのわちゃわちゃをよく利用しますね。

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神田の近く、ということは「音乃木坂の近く」ということ。

となれば「μ's」に憧れるメンバーは「行ってみたい」と考えるのが自然です。

しかし、一人浮かない顔なのは、「音乃木坂から転校してきた」梨子。

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中学時代に、ピアノの実績を買われ音乃木坂に入学した梨子。

(音乃木坂が元々音楽学校だったという、忘れていた設定!)

しかし高校入学後には思ったような結果が出せず、逃げるように浦の星へと流れ着いた梨子にとって、音乃木坂はまだ「戻れない場所」です。

夜中、眠れずにいた梨子が千歌だけに語った「音乃木坂」と「ピアノ」への思い。

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梨子にとって「自信を喪失した場所」へと戻るのには、まだ時間が必要です。

それは彼女がまだ「トラウマを克服できていない」からです。

彼女が音乃木坂に戻る時、それはドラマが大きく動く時なのでしょう。

 

また、この想いを千歌とだけ、共有したことが後々の伏線へとなっていくわけですが、それはまた別の話。

そしてもう一点。

「ピアノが弾けるようになった」梨子は「音乃木坂」に「戻る」日が来るのでしょうか?

このあたりは2期以降の物語になりそうですね。

 

■「saint snow」という存在と意味。

物語の時間軸が前後してすみません。。

とはいえ、saint snow7話と8話を繋ぐブリッジですので、このタイミングまで待ちました。

千歌にとって「希望」の象徴である「μ'sが練習していた階段」。

そこを登りきった先には「希望」が待っているはず。

しかし待っていたのは、彼女たちの行く手を塞ぐ「カタキ=ライバル」でした。

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アカペラでのハモリというド迫力な登場演出。

そこには「歌唱力」という部分での「Aqours」とのクオリティの差別化が為されています。

更に全力疾走からの・・・

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跳躍・・・!!

こ、こいつ、ムダに身体能力の高さまでアピールしてきやがった!!!

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ニヤリ(ドヤァ)

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(鹿角姉妹はクールに去るぜ。)

 

というわけで強烈に自意識過剰個性あふれる自己紹介をかまして去っていくsaint snowのお二人。

「優しいラブライブ世界」においては珍しく「ヒール感」溢れるキャラでございます。

再登場はいつなのか・・・!

と思っていたら凄まじく直近

なんとAqoursと共に前座として呼ばれた2組のうちの1組がsaint snow」だったのです。

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・・・ほんとどうでもいいんだけど、この二人なんとなくガンダムXの「変態兄弟感」がありますよね。ほんとどうでもいいけど。

ガンダムXのフロスト兄弟)

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「観ていて!私たちSaint snowのステージを!」と高らかに宣言しステージに向かう二人。

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(出崎演出みたいになってる!)

披露した曲はSELF CONTROL!!」

まずアニメの動き、スゴイです。

「静止画にするために作ってない」のがキャプチャ取ってると良く分かる。

あくまでも「動かす」ために作ってるので、良いキャプチャが取れないこと。

しかし、だからこそ、凄いグルーブ感と躍動感を生む歌唱シーンになっていますね。

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確かな歌唱力、そして表現力

「二人しかいない」からこそ手が抜けないという緊迫感

そしてその緊迫感が生み出す精緻なパフォーマンス

間違いなく現時点ではAqours」を凌駕した存在として映ります。

非の打ちどころがない、まさしく「パーフェクト」。

反面、歌詞に視線を向けてみると、彼女たちがまだ「未熟」であることが際立ちます。

 

 歌詞を読み解くと

「最高だと認められたい」

「認められるためには、遊びではなく真剣でなくてはダメ」

「真剣だと認めさせるためには、弱い自分の影に打ち勝たなくてはならない」

「最高だと言われるために自制(self control)しなければならない」

となんだかライザップみたいな歌詞になっています。


Saint Snow - Self Control Lyrics

このblogでは再三言っていますが、「ラブライブ!」という作品が「ミュージカル作品」である以上、歌が出てきた場合にはきちんと物語上意味があって登場しています。

ということは、この歌詞もまた「彼女たちの現状」を表現していると考えるのが自然でしょう。

一見Aqoursよりもはるか高みにいるように見える彼女たちもまた「模索の途中」にいるAqoursと変わらぬ存在」なのです。

放送直後にはこのsaint snowへの非難が相次ぎましたが、私にはちょっとよく分からない現象でした。

それは歌詞を読み解くことで、彼女たちの役割が分かっていたからでもありますが。

8話序盤、涙目で「ラブライブを馬鹿にしないで!」と詰め寄る姿から、彼女たちの現状は分かるはずなのですが。

 

さて、「SELF CONTROL!!」の歌詞から感じるのはsaint snowを動かしている動機が強烈な「承認欲求だということ。

なぜそんなカルマを背負っているのかは現時点では分かりませんが、「誰かに自分を認めてもらうために頑張る」というのは、Aqoursとは真逆のアプローチです。

何故ならそれはμ'sのアプローチとも真逆だからです。

ラブライブ!シリーズのテーマの一つが「他人など気にせず、自分を愛する(誇る)」ことであり、μ'sはアニメ2期で何度もそのテーマを反復したにも関わらず、saint snowの動機はそれとはずれています

となれば「テーマ」を描くために「物語」があるラブライブ!」では彼女達もまた変化していくはず。

今後Aqoursと戦うなかで彼女たちはどう変わっていくのでしょうか。

こちらも楽しみです。

 

■μ'sも真っ青な負けっぷり。しかしそれは予想の範囲内。娯楽作品故の「敗北」とは。

とはいえ歌詞の中身と関係なく、周囲のアイドルとAqoursのクオリティの差は歴然

Aqoursのメンバーはひどく打ちのめされます。

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(せっかくの東京でも、どこか心ここにあらず)

これまで第3話では挫折しかけるも「友人や家族の協力」を得て乗り切り、なんだかんだ順風満開にやってきたAqours

そんな彼女たちにとって初めての挫折

とはいえ、この敗北はこちらには予想済みです。

というのも、「ラブライブ!」という作品は非常にスタンダードな作劇に従って作られている作品だからです。

ハリウッド的(というか日本映画でも同じ)作劇の決まりとして

「まず少し勝つ、その後めちゃくちゃ負ける、そしてそこから這い上がって勝利する」というのが、「娯楽作品」の基本

ラブライブ!」はそれを忠実に守って作劇しているわけです。

前作「ラブライブ!」でも基本それに従っていましたが、ちょっと上手くいかなかった部分もありました。

ま、だからこそ今回は更にブラッシュアップしてくるだろうなと予感して見ていました。

そんな期待に応えるかのように(?)Aqoursには追い打ちが。

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「はっちゃけお姉さん(俺命名)」に呼び出されて渡されたのは、イベント参加ユニット全ての人気投票結果

今回はこの結果をもって入賞者を決める…というイベントだったのです。

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(前作から唯一の継続登場人物 はっちゃけお姉さん=俺命名)

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「渡すかどうか迷った」…というその結果。

その言葉だけで不安を増すメンバーたち(と視聴者)。

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結果は30組中30位。得票数0という、驚異的な「負けっぷり」

「負ける時はとことん負ける」というのはラブライブ!」の伝統。

とはいえ、「これはあり得ないだろう!」と怒っている人も見かけたんですが、「ラブライブ!」って作劇としては「寓話」に近いものがあるので、こういった部分での「リアリティバランス」みたいなものって全然取らないんですよね。

あくまでも「伝えたいこと」のために「表現」がある。

「物語」のために「キャラクター」がいる。

というバランス構成なので、ここは呑んでいただくしかない。

(ま、そういうバランスだからアニメそんなに見ない僕でも大好きなんですけどね。)

 

とはいえ、ここまで「負ける」というのは私も予想外ではありました。

さて、いよいよ「決定的に負けた」Aqours

ここから彼女たちの物語は急激に動き出します

 

■「敗北」の受け入れ方。曜と千歌。

「決定的な敗北」はいつも明るいAqoursのメンバーにも影を落とします。

その中で必死に「頑張ったからこれで良い」とメンバーを鼓舞する千歌

しかしその笑顔はどこか堅苦しいものです。

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そんな千歌に真っ向から問いかける曜。

「千歌ちゃんは、くやしくないの?」

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そんな曜の「直球」にぎょっとするメンバー。

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それに対してしどろもどろになって返す千歌。

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しかし、本音は聞けず。

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帰り際。

千歌が迷った時に必ず問いかけてきた「スクールアイドル止める?」という問いかけ。

しかしこれにも千歌は答えず

二人の間には溝が生まれてしまいます

 

生粋の「スポーツ少女」として育った曜。

彼女が選んだのは「個人競技」である「水泳」でした。

そんな彼女の日常は「自分との闘い」の連続のはず。

勝利のために分析と練習を怠らず、結果的に「勝利し続けてきた」曜。

結果として「飛び込みの能力はインターナショナル選手レベル」というアスリートに成長した曜。

そんな彼女には「敗北する人」の気持ちが、もっといえば「凡人」の気持ちが分かりません。

だから、千歌の気持ちを今一つ理解しきれないし、千歌を上手く励ますことも出来ない。

しかし、彼女自身はホントはそれを「分かりたい」

その痛みを千歌と「共有したい」

でも「分からない」

そんな曜のジレンマがこのシーンには集約されています。

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結果的にこの溝が後々の伏線となるわけですが、それもまた別のお話。

 

■「千歌以外」が見つめる「月」。千歌が掴もうとする「太陽」

帰宅後、物思いにふけるAqoursメンバー。

彼女たちが共通して見つめるものが「月」でした。

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2話のハイライトでも書きましたが「月」は自ら輝けない星です。

故に輝くために「太陽」が必要

しかし、現在のAqoursは絶対的な「太陽」だったはずの千歌を失った状態です。

このシーンは、そんな千歌以外のメンバーの現状を「月」に見立てて表現している、いわばメタファーの表現となっています

続く曜と梨子のシーンではそれがもっと分かりやすく示されます。

曜は千歌とのやりとりを思い出し、上手く励ませない自分に歯がゆさを感じ、思い悩んでいます。

その際見ているものは「千歌=太陽」の写真です。

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梨子はベランダから千歌の部屋をただ見つめます。

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このベランダは、第2話で梨子が「千歌=太陽」と出会うことで「希望を手に入れた」象徴的な場所です(詳しくは2話ハイライトをお読みください。)

すなわち、二人も自分自身を月になぞらえ、「千歌=太陽」の復活を願っている、という状態なわけです。

しかし、誰もが「太陽」としての役割を期待している千歌自身は、一人部屋に籠り、寝転がり、ふさぎ込んでいます。

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そんな状態の彼女が手を伸ばすのはμ'sのポスター

前作「ラブライブ!」の劇場版作品「School idol movie!」が本作「ラブライブ!サンシャイン」に大きく影響を与えているのは何度か指摘させていただきました。

その劇場版のストーリーとは、

μ'sはスクールアイドル達とSUNNY DAY SONGを共作し、SUNNY DAY SONG」を「スクールアイドル」のアンセムとすることで、μ'sが解散したとしてもSUNNY DAY SONG」が「μ's=スクールアイドルの意志や希望」を伝え続ける故にμ'sが解散したとしても「大丈夫なのだ」という物語でした。

しかし、千歌はこの文脈を把握していません。

彼女はμ'sに「太陽」を見ており、それ故にその「太陽」を掴もうと手を伸ばします。

(ここの手の動きもまた、映画での穂乃果の手の動きを意識したものですね)

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しかし千歌は、その太陽をつかまえることができません。

なぜならμ'sもまた既に「太陽」としての役割を終えているからです。

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ここで一つ千歌というキャラクターの前提が覆されます。

すなわち「太陽」思われていた千歌もまた「月」であったということを示すシーンなのです。

ここは非常にアッサリと描かれていますが、作品にとっては「非常に重要なシーン」だと思います。

なぜならこここそ「μ's」と「Aqours」を分ける、

或いは、

穂乃果と千歌を分ける、

決定的な違いだからです。

 

■「海」に入る千歌とその意味。

朝、梨子がふと目覚めて外を見ると千歌が海に向かって歩いていきます。

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なんとなく胸騒ぎがして、千歌を追いかける梨子。

千歌はそのまま海に入水していきます。

「まさかそこまで絶望していたとは!」と焦る梨子。

必死に呼びかけると、意外にもあっさりと千歌が海から顔を出します。

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「心配した!」と告げる梨子に対して

「海の音を聞いてみたかった」と告げる千歌。

ここは1話・2話での二人のやりとりを反転させている描写ですね。

何故千歌は「海に入ったのか」。

それは千歌が「希望を見失ってしまったから」です。

 

ここでもう一度、第2話における「海もぐり」のシーンとその意味を考えてみましょう。

詳しくは2話のハイライトを参照頂きたいですが、あのシーン自体が

「迷いの中にいる梨子とそれを解決に導く千歌と曜」

「梨子に希望を与えるもの=太陽=スクールアイドルという存在」

という二つの要素を視覚的に表現したメタファーのシーンとなっています。

 

これを念頭に入れて考えれば、「何故千歌が海に潜ったのか」が分かります。

2話では、千歌もまた梨子・曜と一緒に「海の音」を聴くことで、「太陽の光=希望」を手に入れた、ということになっています。

一見、「梨子だけが救われた」ようにみえるあのシーンですが、実は千歌と曜も「内心半信半疑だったスクールアイドルの活動に活路を見出した=希望を見つけた」というシーンだったわけです。

だからこそ、千歌は第2話での行動を繰り返すことで、もう一度「太陽の光=希望」を手に入れたいと考えたのです。

しかし結果的に、一人では「海の音」を聴くことも「太陽の光」も見ることはできませんでした。

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千歌がどちらも得られなかったのには、二つ理由があります。

一つは「一人だったから」

そして二つ目は「再生を済ませていないから」です。

 

■「くやしくないの?」

「海に入る」というのは、非常に分かりやすい「再生」のメタファーです。

映画にはよく「一度子宮のような場所に入る→そこから出ることで産まれ直す=再生する」という復活の過程が描かれることがあります。

「海」は「万物が生まれた場所」と表現されるほど、生命の誕生と関係の深い場所でもあります。

そこに一度「潜る」ことで、「再生」するというのは、とても分かりやすい表現だと思います。

「海に潜った」千歌は、「再生へのきっかけ」を得ました。

だからこそここから「本音」をさらけ出すわけです。

その「本音」とは至極まっとうなもの。

「自分が率先して始めた以上、自分が負けたことを気にし過ぎていたら、周りにもそれが伝染してしまう」

「自分がショックを受けたら、皆が嫌になる。だから努めて明るく振舞っていたこと」

そして

「一生懸命頑張ったのに、それが認めてもらえなくて悔しいこと」

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6話「PVを作ろう」で鞠莉が言った言葉、

「努力の量と結果は比例しない」

その事実をまざまざと見せられた千歌。

その理不尽さは、誰しも感じたことのあるもののはずです。

 

1人で責任を背負い、苦しんでいた千歌。

ようやく素直になれた千歌に、梨子は告げます。

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「バカね、みんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルになったんじゃないの」

「自分で決めたのよ」

 

ここは非常に素晴らしいシーンですね。

曜が千歌の苦しみを共有できないのとは逆に、梨子には千歌の痛みが良く分かります

それは、梨子も同じ痛みを抱えてきたから。

学校や親からの期待に過剰に反応し、委縮し、いつしか「全てがつまらなくなってしまった」梨子。

そんな彼女を救ったのが千歌でした。

だからこそ、今度は梨子が千歌を救う。

千歌が梨子に寄り添ったように、梨子も千歌に寄り添うことで救う

素敵なシーンです。

 

また、前作「ラブライブ!」が抱えていた問題の一つが

「μ'sのメンバーが穂乃果に依存し過ぎ、穂乃果もそれに応えすぎる」

という問題でした。

この問題は「ことり留学プロット」(9話振り返りで解説します)の際に肥大化し、最終的には穂乃果が「神」に近い存在となるまでに拡大化していってしまいました

結果として「ラブライブ!」は「神話」のような物語になり、まぁそれはそれで良かったわけですがw

とはいえ、それを繰り返してしまうとラブライブ!」という作品が伝えたいテーマから離れていってしまう、という懸念がありました。

そこで今回はその課題を作品内で「相対化」することで、問題を解決に導いたわけです。

それは「一人」ではなく「全員」で「痛み」をシェアし、先に進むということ。

千歌は抱えていた「悩み」や「苦しみ」をメンバー全員とシェアすることで、救われました。

それは穂乃果が発生した問題を「自分一人で考え、自分だけで解決した」のとは真逆のアプローチです(もちろんそこにメンバーの手助けはありましたが)。

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千歌が「神格化」されず、「メンバーの一人=神ではない普通の人」として認められる。

そうすることで本来「チームもの」の作品が持つ「全員で戦う」というジャンルそのものの魅力がしっかりと描かれるわけです。

そしてそれは、「ラブライブ!」が意外にも「見落としていた」視点の一つなのです。

 まさしく

「負け犬たちのワンスアゲイン」作品としての産声を高らかに上げ、

「この作品はμ'sの物語とは違う!」

という自己主張を強烈に発した、大事な回となりました。

全ての「平凡な人々」の「希望の物語」として、「ラブライブ!サンシャイン」がより大好きになった回でしたね。

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(痛みをシェアしたからこそ、彼女たちには希望の光=太陽の光が与えられます)

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「STEP ZERO to ONE」

「冒険に出るんだ  最初はひとり
 やがてみんなと めぐり逢えるかも
 ゼロから一歩は 勇気が必要 変わりたい Step! All right!!」

「変われそうで 変われない時だって感じてるから 今度こそ 今度こそ 0から1の扉を開けよう 変わりたい時なんだ たぶんこの先の未来は謎のままだね 

 ZERO to ONE ZERO to ONE ZERO to ONE ...STEP! 

    ZERO to ONE steppin'my HEART!」

 

彼女たちの「冒険の物語」に、まだまだ胸を熱くできそうです。

というわけで7話8話まとめて考察でした。

次回9話!!

神回だけに長くなりそうだなぁ。。

 「step zero to one」はこのシングルに入ってまっせ!