Love Live!Aftertalk!

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ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の九 黒澤ルビィ】

キャラクター編もこちらで完結。(番外編があるかもしれませんが)

最後はみんなの妹「ゅびぃ」ちゃんです。

■黒澤ルビィ

「”弱すぎる意志”の中に眠る”絶対的なアイドルへの才能”とそれを呼び起こすもの」

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自己紹介CDの時には、「ぅゆ...」とか「おねぇたゃん...」とか「ゅ..ゅびぃね...」とか「がんばりまひゅ!」みたいなやたらと舌たらずな喋り方が印象的だったゅびぃたゃん。

しかし、いざアニメが始まるとどんどんその印象が薄まり、むしろ「ピギャー!」を中心とした「怪音発生装置」としての印象が強くなっていきました。

また元々の設定としてあった「姉がちょっぴり苦手」だったり、「犬が苦手」だったり、「運動神経はそれほどよろしくない」だったりという、いわゆる「弱点」にあたる設定はついぞ消え失せ、結果として「ちょっぴり薄めな味付け」のキャラクターになってしまったことも否めません(とはいえ元々ラブライブのキャラにしては濃いめの味付けという印象はあったので、これはこれで丁度よい塩梅になったのかもしれませんが)。

これまた「アニメ化」にあたっての「キャラクター整理」の一環なんでしょうが、ルビィに関しては、「本人の持つカルマを、自らの意志で断ちきる」というテーマを先鋭化させるにあたって有効でした。

 

ルビィというキャラクターは元々ちょっと独特なキャラクターです。

アイドルに憧れながら、極度の人見知り。

更に自分の意志を発言することが出来ず、姉であるダイヤをほとんど崇拝するように信仰しています。

そんな人物に更に「弱点」を付与させていくと、キャラクターとして非常に扱いづらくなってしまうわけです。

更に「課題」を抱えた少女たちが、「課題」を克服することで「自分を愛せるようになる」ことが「ラブライブ」のメインテーマであるとするならば、ルビィの場合にはその「課題」があまりにも多くなってしまう...という問題もあります。

全13話という限られた尺の中で、一人のキャラクターに割ける時間は決して多くありません。

その中でいかにして「ルビィの葛藤と成長」を描くか。

その問題への回答が「最低限の弱点だけを残す」というキャラクターリライトだったのでしょう。

アニメでは、ルビィの持つ課題は「意志薄弱であること」と「姉への依存」という2点に集約され、この課題を親友である花丸が「能動的に」動くことをきっかけに克服していく、という物語が描かれました。

「ルビィの価値を最も理解する」花丸と共に「スクールアイドルになる」ことで、己を縛っていた「カセ」を取り払ったルビィは、その「真価」を徐々に発揮していきます。

Aqoursメンバーと共に、初めての「階段登り」に挑んだルビィは、運動神経抜群な曜ですら苦戦したそれを問題なくクリアしていきます。

一人置いてけぼりになってしまった花丸を気遣い、戻ってくる余裕まで見せるわけですが、花丸はその気遣いをはねのけます。

「相手のことを思いやり、共感する」力は、その人の持つ「優しさ」を現す要素でもありますが、ルビィに関してはそれが”過剰”過ぎました。

故に「姉のこと」を気にしたり、「友人」のことを気にしたりし過ぎて、「自分」を「ないがしろ」にしてしまっていたのです。

花丸の檄によっていよいよ「自分の殻」を破ることに成功したルビィは、その身体能力を鮮やかに発揮させ、一人ゴールへと駆け上っていきます。

ここでもしも「実は運動神経が苦手」という設定が残ってしまっていたら、「ルビィが本来持っている能力の高さ」を描写する足枷になってしまうところでした。

そういった面でも「キャラクターのリライト」は機能しているように感じます。

花丸のおかげで自らの「殻」を破ったルビィは、今まで一度も逆らわなかったであろうダイヤにも、はっきりと自分の意志を伝えます。

結果としてルビィの「スクールアイドル活動」を認めることになったダイヤ。

鞠莉に「良かったわね。願いが叶って」と言われながら、その表情は窺い知れません。

しかし、恐らく喜びの表情を浮かべていたはずです。

そのルビィの変化は、ダイヤも望んでいたもの。

ようやく「自分が愛してやまない妹」が「自分という壁」を突き破ってくれたのですから。

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の八 小原鞠莉】

 いよいよこちらの特集も佳境。その8は小原マルィーさんです(BGMは脳内再生してください)。

■小原鞠莉

「能天気...とみせかけて、胸にくすぶり続ける炎。その行先を求める”熱い女”」

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中盤に至るまで”ミステリアス”な存在として物語に緊張感をあたえた鞠莉。

本人は初期設定の通り「陽気で能天気でゴージャス」な人物でありながら、留学を切り上げて”廃校間近”の浦の星に戻ってきた理由は謎。

しかも”わざわざ”「生徒会長」であるダイヤよりも上の権限を持つ「理事長代行」という肩書まで持って帰ってきた。

その狙いはいったいなんなのか?

Aqoursにとっては敵なのか?あるいは味方なのか?

その「目的」が明らかになる過程も「サンシャイン」の物語においては重要な要素の一つでした。

8話ならびに9話で初めて明らかになった「鞠莉、ダイヤ、果南」の過去。

それはスクールアイドルとしてラブライブに出場し、「浦の星」を廃校から救おうとしたこと。

そして、挫折したこと。

その理由が「果南が本番で歌えなかった」からであったこと。

それでもスクールアイドルを継続しようとした鞠莉を果南が制し、スクールアイドル活動が中途半端な形で「終わってしまった」こと。

...ライブ失敗をもって「海外留学」へと向かった鞠莉でしたが、その「後悔」は胸の奥で燻り続けていました。

そんな鞠莉の耳に”どこからか”届いた「スクールアイドル再結成」の噂。

鞠莉は「燻っていたもの」に再び火を灯すことを誓い、動き始めるのです。

「理事長代理」という肩書は、Aqoursの活動を「全面的にバックアップする」体制を、自身の権限において発動するためのもの。

とはいえ、高校生に与えるには大きな権限。

「まともな大人」なら「はい、どうぞ」と、ポンと渡すものではないはず。(いかに娘を溺愛していたとしても)

そう考えれば、この権限を得るために鞠莉もある程度の「苦労」をしたはずで、そんなところからも鞠莉の「Aqours」への思い入れの強さを感じるのです(妄想ですけどw)

狙いが明らかになるにつれ、「陽気で能天気」な表の顔とは別の、「Aqours再結成」に執念を燃やす「熱い女」の顔が見え隠れし、そのギャップが彼女の大きな魅力へと変わっていきました。

詳しくは語られていませんが、幼少時代の鞠莉は「良家のお嬢様」といった風情が似合う女の子でした。

そんな鞠莉を「今の鞠莉」に変えてくれたのは幼馴染である果南と、「内浦」という土地であるように思えます。

「目立つ見た目」、しかも「お嬢様」。

それは周囲に「とっつきにくい印象」を与えるものでしょう。

しかし、そんな鞠莉に、特別扱いせずに接してくれた最初の友達である果南。

そして自分を迎え入れてくれた「内浦」という場所は、鞠莉にとってかけがえのない場所なのです。

だからこそ「らしくない果南」も、「廃校間近の浦の星」も、鞠莉にとっては到底見過ごせないもの。

故にあらゆる困難を乗り越え内浦へと舞い戻り、どれだけ拒否されても果南への説得を続け、内浦へのリスペクトが足りない千歌たちを窘めるのです。

本来は「ゴージャスなお嬢様」である鞠莉が、自分を「愛してくれた存在」の為に泣き叫び、しがみ付き、なりふり構わず駆けずり回る姿は、とてもとても感動的でした。

だからこそ彼女の願いが成就した「今」に多幸感を感じるのです。

 

 

 

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の七 国木田花丸】

キャラクター編第7弾はズラ丸ちゃんです。

 

■国木田花丸

【”誰かの物語”を生き続けた彼女が、ようやく始めた”MyStory”】

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引っ込み思案で、おとなしく、なんとなく薄幸な雰囲気を漂わす「美少女枠」が花丸のアニメでの役割。

だったはず。少なくとも当初は。(後半は食いしん坊キャラにシフトチェンジしてましたがw)

実家が「お寺」(恐らく真言宗なので、花丸ちゃんは密教徒...?というどうでもいい想定)

しかも祖父母と暮らすという環境の中で、PCを始めとしたデジタルデバイスだけでなく、一般的な家電製品とも断絶されており、トイレのハンドドライヤーに「未来」を感じてしまう。

そんなどこか浮世離れした女の子でもあります。

当然同世代の女の子とは、なんとも空気を合わせにくく、(マイペースな性格も手伝って)花丸は孤立していきます。

その中で彼女が見つけた居場所は「図書室」。

図書室」にある数多の蔵書とそれらが語る「物語」。

その「物語」の登場人物に自分を投影し、「物語」の中に生きることで、ひと時「現実」から離れることに「埋没」していきます。

そんなある種の「孤立」状態から彼女を救い上げたのは、ある日偶然図書室で出会った黒澤ルビィ。

スクールアイドルに夢中...にも関わらず姉ダイヤの意趣変更の結果、自宅でアイドル雑誌を読めなくなったルビィは、図書室でこっそりと楽しんでいたわけですが、そんな「夢見がち」な二人は意気投合。

花丸は「空想世界」ではない「現実」において、初めて「親友」と呼べる存在を手に入れます。

ルビィと触れ合う時間の中で、彼女が持つ「可能性の豊かさ」を知る花丸。

「ルビィがやりたいものがあるのなら、それを全力で応援したい」。

そう思うようになります。

しかし花丸以上の引っ込み思案であるルビィは、自分を”過小評価”するクセがあり、花丸はそれを口惜しく思うようになります。

いつしか「ルビィの可能性を開花させる」ことを「自分の夢」として持ち始めた花丸。

Aqours」との出会いはそんな「自分の夢」を叶えるためのきっかけに過ぎないはずでした。

「ルビィ」という「親友の物語」を成就させるため、普段の姿からは想像出来ないくらいアクティブに動き始める花丸。

一人での加入に難色を示すルビィのため自分が率先して「Aqours」のメンバーとなり、

花丸に遠慮して自分を出しきれないルビィを叱咤激励し、

ルビィにとってのカセとなっていた姉:ダイヤとは直接対話させることで、関係改善と進展を図る。

明確な目標のため、ロジカルに戦略を組み立てる姿から花丸の地頭の良さが伺えます。

遂にルビィが抱えていたカセの全てを解決し、「親友の物語」を成就させた花丸は、満足気に「図書室」へと戻っていきます。

「これでマルの話はおしまい」と。

ルビィのいない、そしてAqoursメンバーのいない「一人ぼっちの図書室」。

ほんの少し前まで、ちっとも寂しくなかったはずのその場所が、なんだかとても寂しく感じます。

机の中には、雑誌のスクールアイドル特集号と、いつしか憧れていたμ'sの「凛」の姿。

最初は「ルビィの夢」のため始めたスクールアイドル。

しかし親友とともに、仲間とともに過ごす日々は、いつしか花丸にとっても「かけがえのない日々」になっていました。

それに気づきながらも”扉を閉めよう”とした花丸を、食い止めたのはルビィ。

花丸が一番ルビィのことを理解しているように、ルビィもまた花丸の気持ちを一番理解していました。

一緒にスクールアイドル活動をしていく中で、今まで見たことのないような晴れやかな花丸の表情を見たルビィは、共にスクールアイドルを続けていくことを提案します。

ルビィが自分のことを過小評価しているとすれば、花丸は「自分の物語を紡ごうとしない」人でした。

形は違えど二人は似た者同士。

だからこそ、二人は「親友」になれたのでしょう。

そしてそんな「親友」の言葉によって、花丸はようやく「自分の物語」を始めることが出来るのです。

それは花丸が憧れる「凛」も同じ。

親友である花陽のためにスクールアイドルを始めたものの、「自分はアイドルに向いていない」とずっと思い続けてきた凛。

そんな凛が「自分を認めることができる」ようになったのは、花陽が「凛ちゃんは可愛いよ!私が抱きしめたいって思うくらい」という全力の「愛情」を示して、「凛をスクールアイドルとして」認めてくれたから。

最も信頼できる「親友」の言葉を受けて、凛もまたこの日を境に「本当の意味」でのスクールアイドルになれたのでした。

凛の物語を知らずして、凛と同じ体験をしていた花丸はまさしく「凛の後継者」としてふさわしい存在。

良い意味で(?)空気を読まずに場を和ます姿も凛に近く、これからの活躍に期待がかかります。

ようやく始めることができた花丸の「My Story」。

どうなるのか「謎のまま」ではありますが、きっと素敵な未来が待っているはずです。

 

 

 

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の六 津島善子】

残るは4人。今回は堕天の女神です。

■津島善子

「己の性(サガ)と真っ向から向き合う。細いが強い不屈の魂」

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津島善子はいわゆる「厨二病」というカテゴリーに含まれるキャラクター。

田中ロミオ氏の小説「AURA 魔竜院光我最後の戦い」をきっかけにその存在がメジャー化し、同作品にインスパイアされた「中二病でも恋がしたい」で一気にスタンダード化した「厨二病キャラ」。

実のところ「ライバル作品」(というか先輩シリーズ)に既に「同じカテゴリー」のキャラクターがいて、そちらがなかなかの人気を誇っている事もあり、「とりあえず出しておけば、一定の人気は獲得できる」という安牌な雰囲気を醸し出しているキャラクターでした。

しかしながら、ある程度のキャラクター数がいる「先輩シリーズ」の中ではそれほど目立たない「厨二病キャラ」だが、こと「ラブライブ」となると、その扱いが難しいだろうとはキャラクター発表時から感じてもいました。

しかも、アニメとなると「ストーリー重視」になる「ラブライブ」では、それが顕著になる。

 果たしてどのような動き方をするのか、読めないところもありましたが、いざアニメの中ではその「個性」を活かして存分に活躍してくれた...という印象が強いですね。

主役回である5話「ヨハネ堕天」において、自らの「厨二病」を「卒業しなくてはならないもの」ではなく、「自分の一部」として受け入れた善子。

しかし、それはAqoursのメンバーが善子にとっての「ヨハネ」を「厨二病」のような「一時的な病」としてカテゴライズせず、善子の持つ「立派な個性」として「受け止め」「受け入れる」ことを認めてくれたからこそ。

善子自身そのことに強い「恩義」を感じており、それが5話以降の彼女の言動や行動にも現れていきます。

例えば8話「くやしくないの?」では、千歌を上手く励ませないメンバーを尻目に、一番最初に慰めの言葉を発するのが善子。

それまで他人を励ました経験のない善子の言葉は不器用そのもので、それを花丸にもからかわれるわけですが、そんなふとした行動からも善子の「Aqoursへの思い入れ」が伝わってくる名シーンになっていました。

あるいは最終話13話。

地区最終予選の準備中、緊張を隠せないルビィと花丸を励ますのは善子。

本来捨てるはずだった「ヨハネ」を救ってくれただけでなく、それを大きな舞台にまで導いてくれたAqoursへの感謝を、「ありがとね」という短い言葉で示すシーン。

ここにも善子の「Aqoursへの愛情」をしっかりと感じました。

善子にとっての「ヨハネ」はある種の「性(サガ)」のようなもの。

決して簡単に「捨てられるもの」ではない。

だからこそ自分が「ヨハネ」でいられる場所=Aqoursは彼女にとって非常に重要なもの。故に善子はAqoursを献身的に守ろうとするのです。

「善子=ヨハネ」のキャラクターの強固さは、Aqoursメンバーでも屈指。

どれだけシリアスなシーンでも、コミカルなシーンでも「揺らがない」のが善子。

それは恐らく今後Aqoursに降りかかるであろう「外圧」に対しても同じ。

いつか彼女の「不屈」にして「気高い精神」と、「Aqoursへの強い愛情」が、Aqoursのピンチを救う時が来るのではないかと、今は密かに期待しているのです。

 

 

 

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の五 渡辺曜】

キャラクター編も折り返し。今回は人魚姫のお話。

■渡辺曜

【何でもできる=器用貧乏? 居場所を求める”人魚姫”】

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渡辺曜はAqoursきっての「出来る女」である。

水泳部では飛び込みを専攻し、実力はインターナショナル選手クラス。

人付き合いも上手く、人見知りしない。

裁縫が出来て、衣装デザインもこなすように美術センスもある。

もちろん運動が得意なので、ダンスもその一環としてこなせる。

挙句の果てには料理もそつなくこなす。

学校の成績関係の話題は出てこなかったのでわからないけれど、おおよそ「欠点」が見当たらない「パーフェクト超人」。

それが渡辺曜である。

その認識は幼馴染の千歌も同じ。

いつも隣にいて、同じことをやっても必ず頭一つ抜きんでてしまう曜をどこか羨望の眼差しで見つつ、「並び立てないこと」へのコンプレックスを抱えていた。

とはいえ「なんでもこなせることが、果たして本人にとっても幸せなのか?」というのが、曜のお話。

千歌が「曜と同じことを出来ない」と思い悩んでいたのと同じように、曜もまた「千歌と何か同じことがしたいのに」とずっと思い続けてきた。

そこに降って湧いたのが「スクールアイドル」。

千歌は「自分と同じような”普通”の女の子がキラキラと輝いていた」から「自分も頑張れば彼女たちと同じようにキラキラできるはず」と思い立ち、「スクールアイドル」を始める。

「普通星人」の自分が頑張れば「なんとかなりそうなもの」なら、「パーフェクト超人」の曜ならなんなく出来る=ようやく曜と同じことを一緒に出来ると考えた千歌は、自ら曜をメンバーに誘う。

中学時代にもずっと千歌と一緒に「何かしたい」と誘い続け、それを断られ続けてきた曜にとっては「渡りに船」な、お誘い。

しかしながら、ここから「パーフェクト超人」の苦悩が始まる。

時を同じくして、音乃木坂から転校してきた桜内梨子。

まずは彼女の存在が、曜を知らず知らず苦しめる。

「スクールアイドル」という未知の分野において突き当たる「壁」。

その中で苦悩する千歌を、曜は上手く励ますことが出来ない。

それは彼女が「苦悩」に対しての免疫を持たないから。

「挫折」を経験していないから。

結果として、「音乃木坂」において「挫折」し、内浦へと流れ着いた「苦悩を知る」梨子に、「千歌の理解者」という立場を奪われ、曜のアイデンティティは揺らぎ始める。

ピアノコンクールにおいて不在となる梨子の代理として、ダブルセンターで千歌と共に踊ることになる曜。

しかし、初めての立ち位置でリズムが合わず、結果として「器用」な曜が「梨子のリズムで踊る」ことで、形式上は解決を見るが、曜の心中はますます荒れていく。

「自分じゃない誰かの代わりをする自分」

「だとしたら”自分の存在意義”とはなんなのか」

初めての集団行動。

しかも「スクールアイドル」という畑違いの場所で、自らのアイデンティティに悩む曜。

千歌が「曜ならばなんだってこなせる」と誘った「スクールアイドル」は、しかして曜にとっては「とんでもなく難しい場所」だったことが明らかになる。

「自分がグループ内に存在している意味」「役割」を見いだせず、自問自答を繰り返す曜。

しかしそんな彼女を救い出すのは千歌。

「曜ちゃんは自分のステップで踊った方が良い」

「もう一度作り直した方が良い。私と曜ちゃんの二人で」

千歌は元から曜の後ろに「誰か」を見たり、曜に「役割」など求めておらず「曜そのもの」しか求めていなかった。

それはAqoursの中においても同じ。誰も曜に「役割」など求めていない。

「曜は曜として、Aqoursにいれば良い」

そのことを理解したからこそ、曜は一人相撲を恥じ、「バカ曜」と自分をなじる。

曜本人が第6話で「悲しい話だよね」と表現した「人魚姫」。

それは「人間になるために、人魚の脚を捨て、美しい声を捨て、人間界へやってきた一人の女が、愛した王子に認められず、かといってその王子を殺すことも出来ず、最後には海の泡となって消える」というお話。

差し詰め曜に例えれば、「千歌と同じ夢を追うためにスクールアイドルになったものの、その世界に居場所を見いだせずにいた」わけで、そのまま追体験させれば「泡となて消える=スクールアイドルを辞める」ほかなかったわけだが、それを千歌が食い止めた形になる。

とはいえ、本来であれば「人魚姫」の王子も千歌と同じ態度を取るべきだったのだ。

「君は君のままで美しい」「人魚のまま私の傍にいてくれ」と言う事が出来たのなら、

「人魚姫」はバッドエンドにはならなかった。

「人魚姫」=「海に還るもの」を否定したAqoursは、その思いを「想いよひとつになれ」という楽曲名変更に託す。

「何かを掴むことで 何かをあきらめない」

そこには曜が「曜としてAqoursにいること」の価値を見出せた発見に対する祝福も込められている。

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の四 黒澤ダイヤ】

第4回はうかつな策士 ダイヤ様です。

■黒澤ダイヤ

「ある時は強敵 ある時は味方 そしてある時は黒幕。Aqours再結成に向けて奔走する"苦労人”」

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ダイヤ様はアニメ化に際して最も※”花田マジック”の餌食になった人なのではないか。

(※ アニメ化に際して大きくキャラクター変更が強いられる脚本家花田十輝氏の手法。前作ラブライブでは、にこ・真姫・希などがマジックの対象になった印象がある)

初登場時から「うかつさ」を存分に見せつけ、「自分にも他人にも(妹含む)厳しい、苛烈な人物」という設定は影を潜めた。

とはいえ、もしもダイヤ様が元の性格のままだとしたら、「皆で進む」という「ラブライブ!サンシャイン!!」という作品の中では魅力を存分には発揮できなかったかもしれない。

前作ラブライブにおける穂乃果のような「強力なメンター」がいない、というよりも「あえて設定しない」ことを目的にした「ラブライブ!サンシャイン!!」では、何よりもメンバー間の「チームワーク」が重視された。

その中でダイヤ様が与えられた役割は「狂言回し」。

「賛否」はあって然るべきだけど、少なくとも作劇という部分おいて、この配置はハマったように感じる。

シリアスな空気になりかけた時には、得意の「ブッブッブーですわ!」で見ている我々を和ませ、Aqoursが調子に乗りそうな時には「スクールアイドルに対する深い愛情と知識」で彼女達を諭し、逆に落ち込んだ時には「自分の経験談」と「スクールアイドルの現状」を語ってロジカルに励ます。

穂乃果のような「強烈なリーダーシップ」を持つメンターではなく、あくまでも本来の「導き手としてのメンター」の役割をダイヤがこなしてくれることで、物語が止まることなく回り続ける。

また活躍はそれだけに留まらず。

「スクールアイドルを始めた」千歌を窘めながらも、巧みに叱咤激励し、その裏では「スクールアイドル再結成」をきっかけに戻ってきた鞠莉を巧みに操作。

鞠莉の行動で果南を刺激し、彼女の本音を引き出して鞠莉との和解を狙う。

最終的にはAqoursへの再加入を画策し、達成する。

まさに八面六臂の活躍っぷり。

流石に全てが「ダイヤの掌の上」すぎて、理屈が通らないところとか、矛盾しているところとか、ご都合主義的過ぎなところとか、諸々あるんだが、もはやそれほど気にならなくなってくるのは何故なのか。

それもこれもダイヤをそんな行動に走らせる原動力が、「卑近な欲望」などではなく「スクールアイドルが好きだから」という「どこまでも真っ直ぐで純粋」な一点に支えられているからだろう。

 

 

ラブライブ!サンシャイン!!  1stライブの前に総括してみましょう企画 【キャラクター編 其の三 松浦果南】

キャラクター編 その③は頑固オヤジこと果南さんです。

■松浦果南

「友のため自らの夢を封印した。頑固で、不器用で、誰よりも優しい"大黒柱"」

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ポジティブで、運動好きで、考えるよりも先に身体が動く。

ちょっとドジなところもあるけど、皆を包み込む大きな包容力と責任感を持つ頼れる大黒柱。

そんなキャラクター設定が、アニメではあえて終盤まで「封じられてしまった」のが果南。

それは「シナリオの重要ポイント」に「果南を中心とした3年生の過去」がチョイスされたからで、仕方ない部分もあったのですが、果南本人と果南ファンにとってはちょっと可哀そうな部分もありましたね。

とはいえ、アニメ終了後の”人気の爆上げ”を考えれば、必ずしもマイナスとは言い切れないかもしれませんが。

果南の魅力とはどこにあるんでしょうか。

個人的には、彼女の魅力は「利他的」なところ。

それに加えて「不器用」な所だと思います。

果南が自ら率先して進めていた「スクールアイドル活動」を「休止」させたのは、親友である鞠莉の「進路」にまでアイドル活動が影響を及ぼすことを懸念したから。

あるいは学校を休学した理由も「実家の手伝いを優先する」ため。

これらの「他者のために自分を殺す」という姿勢は、果南の「利他的精神」の現れのように思えます。

とはいえ、「スクールアイドル活動休止」に関しては、その方法があまりにも強引で、一方的でもあったため、本来「利他」の対象にあたる鞠莉に訝しがられ、結果としてそこを修正できずにどんどん綻びが広がっていきました。

また協力者であったダイヤもきちんと説得できていたわけではなかったので、こちらの動きも規制できず。

結果として、本来「器用」ではない果南は「口をつぐむ」ないしは守ろうとした相手に「嫌われ」「関係を閉ざすこと」で、その対象を「守ろう」とするわけです。

あぁ、なんと「不器用」な...。

鞠莉に「活動休止」を告げる部室でのシーン。

「スクールアイドルが嫌になった」と口で言いながら、ホワイトボードには「未熟DREAMER」の歌詞を書き続けます。

そこには口で話すこととは対照的な言葉が並んでいます。

本当のメッセージはここにあることを伝えようと必死ですが、しかしながらその意図は鞠莉には伝わりません。

ダイヤは意図に気付きながらも、鞠莉にはそれを伝えられず、結果として彼女達は「空白の約2年」を送ることになるのです。

あぁ、なんと「不器用」な...。

とはいえその「空白」があったからこそ、彼女達の和解は感動的であり、最終回13話でのやりとりにも「深み」が生まれたのです。

「利他精神」は彼女自身が持つ「包容力」の現れ。

今後カセから解放された果南は、恐らく活き活きとその魅力を発揮してくれるはず。

その時明らかになる果南の新たな魅力を発見できるのが、今から楽しみです。

 

ラブライブ!サンシャイン!! SPMフィギュア 松浦果南